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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

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第29話、波乱万丈万華鏡

ある日、啓は博よりあることを聞かされていた。研修生の一人が自分たち

の元へ来るという知らせに騒然とする。やがてやって来た青年は『リオン』

という生粋のイギリス人だが、彼には少し欠点があり慌ただしくなるのだった
__________________________________
「そうか〜出会っちゃったかあ〜」

ある日の事、ファミレスでポテトを摘むと緋香琉は感慨深そうに告げた。その隣に

はクロス、向かいには和葉の姿があり彼女らは放課後偶にこうして交流している


「結局、和葉と彩花の持ってるもんは別ものなんだよな?形とか色は全く同じだけど、彩花が戦えたってことは」

「完全に術を失った訳じゃないってことね」


ちらほらと席が埋まっている中、彩花に代わり新たに『勇気の守護者』として

選ばれた清守和葉は時折現れる魔物達を緋香琉、クロスと共に退けている


「和葉も慣れた?」

「え?それは」

「ま、そんな簡単に慣れるわけないか〜」

「ま、まあ最初よりは慣れたけど……」


広場以来、神月彩花と言葉は交わしていない。存在が明らかになったことに

よりコンタクトを取ろうとするがすれ違う度、彼女は角の立つ表情を向けた


「未だに信じられないって言うか」

「それは皆が通った道だー。あ、クロスはそうでもないか。シスターだし」

「あのね、あそこも普段は魔物なんていなかったんだから。あの時だけ。
 怪我人の傷を治すことはあってもあんな事誰でも驚くし、私も驚いたし」


『力の守護者』赤井緋香琉、『知恵の守護者』クロス。和葉にとって彼女らは先輩

に当たるが、守護者である事を除けばただの同級生。至って普通の女子高生だ


「ま、私らに任せてくれていいよ。敵を突き倒すのは私の得意技だし?
 流石にあの時みたいなとんでもないのと戦うなんて事ももうないでしょ」

「ううん、私も選ばれたなら、ちゃんと戦うよ」

力強く告げる言葉に二人は和葉を見つめていると緋香琉は頬に手を当てると

「『勇気の守護者』……ねえ」

「和葉を見ていると、的を得てると思って。この短期間でここまであの力
 を使いこなせてこんな事が言えるなんて、まさしく『勇気の守護者』ね」

「まあ確かに、今じゃばったばった倒してくし?剣の扱いも慣れてきたっぽいし?」

(……)


そんな彼女達の笑い声を聞きながら、突如起きた事を思い出していた。

それは何の変哲もなかった日常を一変させた。度々都内に魔物が現れた

ニュースは見ていたしあの時も学校が襲われた。それから何十日も後の

事、偶然和葉は魔物が襲っている現場に遭遇する。


『……っ!?』


そんな中、目の前に迫った魔物は光に消し飛び、その光の中から緑色の

髪の女性が現れると和葉にこう言いあの力を授けたのだった


『貴方にこの世界を守る力を与えるわ。貴方は『勇気の守護者』としてこの
 世界を、いえ、この空間を守って欲しいの。これは貴方にしかできないこと』


この国でここ数年、得体の知れぬ生き物が目撃されていたのは何度かニュ

ースで耳にしたことがある。しかしそれはいまいち実感のないものだった。

自衛隊や警察といった専門の組織があり私にはどうにもできない問題だと



『貴方が新しい勇気の守護者……』

『私は赤井緋香琉、こっちはクロス。ひとまずはウチらに任せてくれていいよ?』


既に数年前からその『使命』を受けていた彼女らは私に対しそう告げた。これ

まで包丁やカッターくらいしか握った事の無い私に対し、実力は求めなかった


「いや、私もさ、ゲームで戦ったり?そういうのはやってたけどかなり
 びっくりしたし?普段ゲームをしない和葉なんてやばかったでしょ」

「え?あぁ、うん」


「私はイメージとか感覚でぶん回してるけど、剣の使い方的なのってわかるの?」

「ある程度は感覚的な……。なんだか脳内に『こう持て、こう振れ』って浮かぶの」

今ではそれなりに慣れ、二人に並ぶように戦っているが二人共同じ高校生とは

思えない強さだった。クロスは後方支援が主でありながら、敵に囲まれても冷静に

物事を判断し、緋香琉は表情豊かにどんな巨大な敵でも迷わず立ち向かっていく


「私も、出来る限りの事はするから」


やがてそれはそれぞれ力の守護者、知恵の守護者に当てはまる事が分かった。

勇気の守護者として、自分がそれに当てはまるかは分からないがもうすでに

これまでのニュースが自分にとって無関係なものではなくなったと実感している


「まあまあ、こうして魔物と戦うのは言っちゃえばウチらが勝手にやってる事だし?」

「それはそうだけど、守護者としての使命を受けてる以上それを壊そうとする魔物
 と戦うのは当然だと思っていたわ。この世界を守るのが私達の使命なんだから」

「だってさクロス、そんなのざっくりしすぎじゃないー?どこから出てんのかすら
 分かんないものをなんとかしろなんて。あの時みたいに『ファントムを倒せ』な
 ら分かるけどさ。それにこの国は私達が動くには動きづら過ぎるんだよぉ……」

「それは、そうだけど」


場所は代わり沙織の家。虚空と話しているように見えるがそれは違う

「また蒼真の所にちょっかい出しに行ってたの?」

『いやいや、少々天界の知り合いに会っていました』


天界人であるハクは飄々とした様子でそう言ってのけるが互いに余計な詮索は趣味

じゃない。そんな一定の距離を保っているからこそここまで気が合うのかもしれない


『私だって友人との付き合いもありますよ?』

「ふうん?」


意外そうに相槌をうつとハクは扇子を広げ誇らしげにこう告げる


『試験管時代の同期や後輩、はたまたその名の通りの友人まで……。これ
 でも私、結構顔が広いのですよ?各々役目の関係で中々会えませんが』


そんな時、テーブルの上にあった沙織の携帯電話が鳴った




「……」

呼び出された先は学校。休日だと言うのに制服姿で現れた沙織は正門

をくぐった先であるいくつかの姿を見つける。それはよく見知った姿で


「上田君に、伊藤くん」

「鈴木、お前も呼び出されたのか」


同じく制服姿の翔太に青空は部活があったのかジャージ姿だ。やがて

時間が経つとさらなる姿が現れる。それはまたしても縁の深い面々だ


「彩花のやつ、急に呼び出してなんだ……?」

「緋香琉にクロス」

「皆さん」

「うえ、北条?」


緋香琉、クロス、更には啓の姿が現れ校庭に集まっていた。しかし集合場所

に連絡のあった本人の姿はなく現れる様子もなく、一同には疑問が浮かぶ


「彩花は?」

「姿を見ないが?呼んだ本人がいないってどういうことだよ」

「という事は、上田達も彩花に呼び出されたのか」

「正確には、『彩花の携帯から』ですが」


どこか含みを持たせる言葉に啓に対し疑問に思うとどこからか声が聞こえた
「あ、集まってる!」

「!?」

茂みから勢いよく姿が飛び出し一同は驚いた。そこには桜丘高校の制服姿で、

金と黄色に近い髪をした少女の姿。緋香琉が声を上げると啓が口を開き


「お、お前は……!?」

「お嬢様は生徒会の手伝いで学校におり、手放せない状態のはずで
 すが?彼女の携帯電話を使って私達を呼び出したのは貴方ですか」

「せ〜いかいっ!」

茂みから出るとくるりと回りながら

「いやー、暇だったからさ、遊びたいなーって」

「……」

「あ、一応自己紹介しないといけないのか。私はトパーズ、彩花の『一部』だよっ」

「「!?」」

彼女の発した言葉に一同は驚く

「な、一部って……」

「トパーズ?どこかで……。!学校が襲われた時、食い止めてた……」

「!どこかで聞き覚えがあると思ったら……あの時の……!」

「そうそう!あの時は皆お疲れ様!」


彩花の一片にしては似つかわないフレンドリーさに多くが困惑するが、髪型

や背丈は本人である彩花と全く同じものだ。彼女は飛び跳ね一同に迫ると


「で、暇だから私達と遊ぼ?」

「遊ぶって……」

「だって暇なんだもん」

「ええ……?」


状況が全く理解できず誰もが困惑していた。再び聞こえた声に振り向くとい

つの間にか彼女に模した姿は増えていた。それは水色の髪をした少女で……


「トパーズ、それじゃ皆ただトパーズのワガママに付き合うだけじゃない」

「あ、貴方は……」

「久しぶりね、啓」

「な、なんだ!?なんか増えた!」

「落ち着いて、私はマリン。言わずとも『彼女』の一人だよ」

「うええ、訳が分からない…」

緋香琉はぐるぐる頭を回しながら

「彩花の色違いがいっぱいでなんだか気持ち悪いぞ……」

「あ、それわかる!ウチらもたまに思うもん!」


とトパーズが言いかけた隣で少女は半ば無理やり話を遮るように向き直る


「まあ、私も思わなくもないけれど……話を戻すね。元々はトパーズの
 言ったように『暇だから』って発端だけど、皆と関わってみたいなって」

「え?」

「私達と……?」

「そう。私達は彩花の一部だけど、それぞれ感覚や意思は違うの。彩
 花ばかりが皆と話してるから私達も皆と話してみたいって思ってた訳」
そこで突然トパーズが全員を呼び出したのだという

「あ、翔太、私達はアクアみたいに突然襲ったりしないから大丈夫だよ!む
 しろ襲われたら守っちゃうよ?ま、この話は後で。で、皆で隠れ鬼しよ!」

「か、隠れ鬼ぃ?」


嬉々として告げるトパーズに対し一同は呆気に取られた。ルールが分

かることを確認すると始めようとするがトパーズは鬼を指定し始める


「鬼は緋香琉!」

「ええっ!?そこはじゃんけんで決めろよ!」

「やだ」

「ちぇー」

「ちょっと待て、まだ参加するとは言ってないぞ」
焦って翔太が告げるとマリンが告げる

「ごめんね。お詫びに、参加してくれたら私達の事を教えるって言うのはどう?」

「えっ……?」


皆が少なからず気になってる事ではないかと彼女は指摘しする。彼女達……通称

『性格』の全ては教えられないけど、マリンを始め彼女達が感じている感覚的なもの

の一部を話すという。それを聞いた翔太はマリンとトパーズを交互に見ながら


「……分かったよ」

「まあ、子供の遊びに付き合うと思って」

「ちょっとマリン!?私も皆と同じ年なんだだけど!?」

「じゃあ緋香琉、適当に数えて」


こうして緋香琉が鬼で始まり、決められた条件の元一同は奮闘することになった。

誰もが始めはしぶしぶ参加したものの、いざ始まれば真剣に逃げ切ろうとするのだ


「あのマリンとトパーズってやつ、アクアとは別人みたいだ。妙に馴れ馴れしいというか、普通の人というか」

「トパーズは彩花らしくないわね」

「……」

クロスの言葉に翔太は押し黙った

「……いや、そうでもない」

「え?」

「あいつは……昔のあいつに似てる」


時間は経ち、やがて彩花は無くしたと思っていたスマホを見て唖然として

いるのだ。そこには特定の人達へ向けて送った連絡の一文があった。

そのスマホの横にはメモ書きでとトパーズの文字と名が記されていた


「ひ、久々に全力で走った……!」

「トパーズお前あっちこっち飛んで猿かよ!」

「ふふっ、私はこの『速さ』がウリだからね!」


日は少しずつ傾き、再び一同は揃っていた。息を切らせたものと初めに

捕まった者はすっかり行きも整っていたり。各々が全力を出したと表情を

している中ひと際明るい声が一同の視線をその少女の元へ向けさせる


「あー、楽しかった!」

「まさか、高校生になって鬼ごっこなんてするとは思わなかった……。な
 んだかんだ言って皆全力で逃げるし……っ!疲れたじゃねえか……!」

「そ、そりゃあ当然だろ」
緋香琉に続いて青空が答えるとそれを見ていたトパーズは笑いながら告げる

「懐かしいなあ。昔みたいだったね」

「……?」

「緋香琉と皆でさ、公園で隠れんぼしたり鬼ごっこしたなあ」

「え……」
楽しそうに告げた後、弾けるような笑顔は消え笑みを浮かべながら彼女は告げた


「約束は約束だからね。私は小さな頃をベースに作られた『性格』なんだ。
 私は彩花の性格の一部や能力を強調し出来ているの。そして私達には、
 性格の基準となる時期も違う。だからまるで別人のように見えるんだ」

「……」

「多重人格とは違ってこれはただの現象だから特別気にする必要はないわ」


トパーズに続いてマリンがそう告げるが一同は言葉を発せずただ彼女たち

の話を聞いていた。時は経ち、何故6人に分かれたのか、未だ分かれたままな

のか、その理由は本人達にもわからないと告げる


「けど、ウチらは結構気に入ってるんだよね」

「彩花も、私達に対して何かを思っているわけではないわ。すっかりそれが
 当たり前になってしまったから。むしろ能力の一つと捉えるくらいにはね」

「……」

やがて一同が解散すると帰り道、翔太は足音に気づき振り返るとマリンの

姿があった。やがて追いつくと彼女は走るのをやめ若干息を切らせている


「……何か用か?」

「はあ、はあ……。……なんとなく察したんじゃない?」

「……何をだ……?」

「もう少し時間ある?」




こうしてとある公園にやってくる。人の姿はなく貸し切り状態だった。この間

別の公園でのアクアの件のように、人がいない方が都合がいいともいえる。

だが彼女はどうやってか桜丘高校の制服でいて、言葉を続ける


「アクアと私。その名前は元の名だと言うことに」

「確かにちょっと思ったが……偶然か何かだろ?」

「偶然なんかじゃないよ。私達の名は私達がそれぞれ自分でつけたもの
 だから。そしてアクアと私は、私達の中で一番素の彩花に近いんだよ」

「……」

「だから、元の名から半分ずつつけたんだ」


彼女は話す。分かれた時、その時の雰囲気からそれぞれは名付けられた。

ティウム、トパーズ、きみどり、パープル、そして、アクア、マリン


「何故かソウルやクリアっていう存在もいるけど……あの二人は私達にもよ
 く分からない。というより私達自身の事でさえ、その多くはわからないんだ」

「そうなのか」

「……アクアが特別翔太を嫌う理由はね、私達は『あの事』が起
 きて、自分の中で終結した時の気持ちで出来ているからなんだ」

「!」


先程彼女達のベースはそれぞれ違うと話していた。トパーズとティウム

は起きる前、きみどりとパープルは最中の写し姿だと話していく


「そう聞けば、アクアが毛嫌いするのも納得出来るでしょ?」

「……あぁ。でも、ならお前は?」


アクアのようなあからさまな雰囲気はしないが、今の話通りなら彼女もアクアと同

じ時時が基準となっている事になる。それは、良くない感情で作られたこととなる。

だが彼女はアクアのようにあからさまな殺意はなく現に普通に会話している


「あ、ひとつ補足しておくよ。私とアクア自体はそれより前にいたんだ。私達二人
 に限っては、彩花の日常が変わり始めた時、負の感情から私達が生まれたの」

「……」

元はホワイト、ブラックと言う名だったそう。あの葛藤の後、彩花には二つの感情

が多くを占めていた。『もうどうでもいい。この世界から消えたい、こんな世界全て

無くなればいいのに』という絶望の感情と『もしかしたら、誰かが助けてくれるかも、

何かが変わるかも。今耐えれば、生きれいればいつかいい事が起きるかも』とい

う失望の中にある僅かな希望、願いの感情。


「そんな絶望の心がアクア、希望の心が私なの」

「……」

「私だってあの時の事は忘れないし君との事を無かったことには出来ない。
 でもね。今はもう終わった事でもある。自分を守るには可能性となる存在
 を殲滅するしかなかった。気を許して、また同じ事が起きたら辛いから」

「……」

「もう二度と、あんな思いはしたくない。だから可能性になりうるものを排除し
 ようとするアクアはある意味正しいと思う。だから私はアクアを否定しない」

「それは……」


無言から、そう呟く翔太はこれまで何度か突如として刃を向けたアクアを思い

出す。あの表情。それは紛れもなく俺に対する怒り、恨みを剥き出しにしていた


(俺だって分かってんだよ。俺らがあいつにしたことは取り返しのつかない事
 で、二度と目の前に現れちゃいけなかった。もしかしたらあいつは死んでい
 たかもしれない……いや、俺達が殺していたかもしれなかったんだから)


けど、けど運命とは時に残酷で、互いが望まなくとも再会してしまう。だが、翔

太も今心の中はもやがかかったように不透明なもので、それがずっと続いている





「どういうつもりだ」


この世ではない空間。それは精神の中、アクアは行く手を遮る紫色の衣服を纏っ

た少女に対し睨んだ目を向けていた。対する紫色の衣服を纏った少女は睨まれ

ているにも関わらず表情と共に微動だにしない


「パープル、お前とてあの時の事を忘れた訳では無いだろう?俺らを苦し
 めた奴が、平然と目の前で生きるのを許せぬ気持ちは分かるだろう!」

「……エメラルド、反省、してる」
短く発する声に対し一層声は鋭くなり

「俺達は誓ったはずだ。あの時、俺達をこんな風にさせた奴らを絶対に許さ
 ないと。俺達は、彩花は固く誓ったはずだ!。可能なら復讐してやりたいと」

「……」

「固く、固く!鍵をかけ、鎖をかけて」

「……人は、変化せずにはいられない」


怒りを露わにするアクアに対し、尚も少女は動く気配を見せない。ハッキリとした

意思を見せないその目でアクアを見つめぽつりと呟いた。それはハッキリと聞こえ


「アクアも……気づいてる、はず」

「!」

「悔しいなあ」
夕暮れの中、マリンは呟いた

「あの時、私……彩花は、『二度と誰も信じない』って誓ったの。まるで騎士が
 王に立てる誓いのように、固く、固く。希望と、その気持ちを扉に入れて、頑
 丈な鍵をかけて、鎖で閉ざして。……そんなイメージだったんだけどなあ」

だけどどうしてかな、その誓いは緩み始めている。あんなに固く閉じたのに

「あそこで出会った人達が、ここで出会った人達が、今まで出会ってきた人達
 との思いが鎖を緩めていく。閉じようとしても、それは自然に緩んでいくの」


「誓いを立てた時の事は、忘れない。だけど、私達も少しずつ変わり始めている」


やがて、アクアはいつもと違う雰囲気に気づく。『彼女達』の中でも、冷静かつ

似た思考のパープルとアクアは気が合う方だ。そんな彼女はいつもに比べ格段

に饒舌になり、そこには『意思』が読み取れた

(……)


いつも感情を表に出さず、必要最低限の言葉しか発しない彼女が、悲しみの

表情を浮かべていることに気づく。アクアはそれを悲しみではなく『悔しさ』と

解釈し僅かに目を見開くと問いかける


「パープル、お前……」

「……私にもわからない。情報を武器に人は足元を救う。なら『情報』を与え
 なければいい。……私の事を知らなければ、誰も貶める事は出来ないから」

「……」

「ただ、『普通』に生きていたかった。特別な幸せなんていらないから」

「……」

「今が、とても怖い。あの時と真逆で、私は凄く満たされているから、あの
 時のように、突然世界がひっくり返って……ドン底に突き落とされそうで」

「あの時の事も、予想できるはずが無い。俺らには予知能力なんてないのだからな」

間を起き、アクアは呟く
「怖い……」



「こんな事言う気はなかったのに。結局、私達の『誓い』はそんな程度だったのかな」

「それは違う……!」


悲しげに告げるマリンに対し、翔太は言葉を発した。だがそれは考えて発した

ものではなく反射的に出てしまったものだ。そしてつい口に出てしまったことに

気づくと驚く表情をするマリンの前で、焦りを浮かべる


「あっ、いや、今のは……」

「……」

「……勝手な事しか言えないが、きっと皆の誓いは頑丈だったんだと思う」

「……」

「あいつらだって……俺だってなんとかしたかったんだ。もがいて足掻いて、なん
 とかしてあの時のように、誰かと笑っていられるように戻って欲しいって……!」

拳を握ると翔太は告げる

「……悔しいよ。お前はあいつの影響で、六本木や北条の力で変わり始めたん
 だから。『あいつらは自分だけの力じゃない』なんて言ってるが……見れば明ら
 かに分かる。その経緯を知ることも出来ずにいつも結果だけが舞い込んでくる」

「……昔から変わらないね。そうやってヒーローみたいな事を言うのは」

「……」

「……これは、彩花の本心なんだけど」

そう切り出し彼女は告げる

「変わるのが怖かった。だけど今は変わりたいと思った。どうしてだと思う?」

「え?それは……」

「それは、君達の為に、だよ」

「え……?」

「そうやって変えようとしてくれるから、私も応えないと、って思ってるの」


今度は翔太が驚いたようにマリンを見つめた。その姿は違う色なのに、僅かに

違う声色なのにそれが彩花の本心だと疑わなかった。それは彼女と彩花が似た

姿をしているからなのか。曖昧な姿の中でも他人とは思えなかったのだ


「誰だって、苦しむ顔より、笑っている顔を見る方がいいと思うでしょ?」

「!」

「敢えて本人風に言うなら、君達皆むかつくキラキラスマイルしとけって事だね」

「そ、それは言い直す必要あったのか?」

「だけど本人がそう思っても凄く難しいことなんだ。変わる事って」


強く封じ込めたからかもしれない。またはまたあんな事が起きる事を恐れて

いるのかもしれない。もしくはその両方かもしれない。変わりたいけど変わ

れない。信じたいけど信じられない。これも結構辛いんだよねと彼女はぼやく


「まだ正解は分からないけど、その『意思』がある事だけは理解して欲しいな」


自分を変える。それがどれだけ大変な事かはそう思った事の無い翔太には

いまいち分からないものだ。だが動き出した時は、過ぎた時は変わらない


「……分かった」




真夜中、彩花が眠る部屋の中で立っていたアクアは、窓へ近づいた。覗いた

先には薄暗い道の中にぼんやり照らす街灯。そして空を見れば星と月がこの

世界を照らし、都心からは離れ住宅街であるものの転々と明かりが灯っている


「俺は……」


誰にも聞こえない、消え入りそうな声で呟く。そして目を伏せると、ある光景を

脳内に呼び起こした。それは当たり前に流れていた暖かな日常が途端に冷や

やかなものになる光景。やがて目を開くと誰にも見せぬ表情で空を見上げていた



====================================

次回

12月も終わりに向かう中日本中は迫りくるクリスマスに賑わっていた。そん

な中、懇願の末休みを貰えた土地達はパーティを開くことに。年を明け、元生

徒会長城島夏目は迫る卒業に思いを馳せる。もう一つの別れも近づき……



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