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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

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第28話、金色の見習い

自身の代わりとなった『勇気の守護者』が気になる彩花は緋香琉達に尋ねる。

彼女らが言葉を濁す中生徒会にある話が飛び込む。様子を見に現場に繰り出

すがその先にいたのは彩花と同じ剣を持ち戦う一人の少女だった……
___________________________________

第一生徒会室で開かれた会議にて、彩花と緒方結希、第三生徒会の会長

が集まっていた。今日が新体制になってから初の会議で、緒方結希が第一

生徒会会長になった為、彩花がこの場にいた


「もっとごつい人だと思ってたな……」

「先ずはこの件について、情報の漏洩による危険性を回避する為口外は禁止で頼む」

「……というより、私が目立ちたくないだけですが……」

「分かったよ」

「あ、ありがとうございます」

「こちらこそ、いつも素早く対処してくれるから皆安心していられるんだ。ありがとう」

「!」
お礼を言われ、なんだかむず痒い気持ちになる

「それで、今日の議題は卒業生の送迎会の内容だけど……」


同時刻、東京から離れた場でキャリーケースを片手に青年は神月博

の前に立っていた。そんな青年を前に博が腕時計で時刻を確認すると


「そろそろ時間だね。新幹線の乗り方はわかるかい?指定席だから、そ
 の切符に書かれた所に座るんだよ。場所はアナウンスしてくれるはず」

「airplaneのようなものですね?」

「うん、そう。分からないことがあれば係の人に聞くといい。降りる場所
 は『TOKYO(東京)』、そこからの乗り換えのメモも持ってるかい?」

「この通り、バッチリ持ってます」

「最後の駅についたら教えてくれ」

「OK、了解しました」


やがて会議を終えた彩花は生徒会室から出ると啓の姿が目に入った。

扉が開いた事に啓も彩花の姿に気づき身体を向けると彩花は問いかける


「あれ、啓?クラスの人に勉強を教えてたんじゃ?」

「用事があると抜けました」

「用事?」
彩花が疑問に思うと彼はこう答える

「実は今朝、博様から連絡がありまして」

「お父さんから?」

「本当はその時お伝えするつもりでしたのに、いつもの如くお嬢様がなかなか
 お目覚めにならず寝坊されるお蔭でバタバタして伝えられなかったのです」

「えぇ……」
こほん、と咳払いすると

「以前屋敷で聞いた研修生の話を覚えてますか?どうやら12月半ば
 まで、一人こちらに来るそうでしばらく預かって欲しいと頼まれました」

「……」
言葉に対し、目を丸くすると数回瞬きした

「……はい?」

「……」

「え、ええっ!?」


道を歩きながら隣で彩花が神妙な表示で考え込む中、それを見ていた啓

も顎に手を当てると脳内は巡っていた。それは決して楽観的なものではなく


(ご主人様はともかく、あの人は何を考えておられるのでしょうか?)

お嬢様の事を考えればこんなことを計画するとは思えない。連絡には『是非

そっちで経験してもらいたい人がいる』とあれどそれがお嬢様にとってどれだ

けの負担になるか。少し考えるだけで頭が重くなる感覚がする


(私の時ですら一大事だったというのに、研修生を向かわせるなど……)

雲行きが怪しくなるのを感じ、だかそれを振り切るように啓は顔を上げ

(いやいや、ここは私がお嬢様のサポートをしなければ!研修生の事も、私が
 なんとかしなければ。研修生ともあれば、無様な姿を晒す訳にもいきませんし)


家に帰ると机にカップが置かれ、啓はメールの内容を読み上げた。研修生

がやってくる時刻は夕方を予定しており、啓には先輩として彼の指導に当た

って欲しいとの事。それはすなわち、啓はある立場になるわけで


「先輩……」

引っかかった言葉を復唱すると

「……そうか。私ももう先輩になるのですね」

「屋敷に後輩はいなかったの?あ、いたとしても来た頃は外国にいたんだっけ?」

「はい、数人それらしき人を見かけもしましたが、戻ってきてすぐこちらへ来ましたから」

「うぅ……折角この状況に慣れてきたのにやだな……」

「……」

紛れもない本音を聞いた啓は言葉を止めた。そしてその言葉でやはり

これを計画した彼らの考えが読めなかった

(お嬢様の事はあの方もよく知っているはず。なのにこちらで研修させる意味は……)

考えるもののそれを振り切ると文面に視線を戻し改めて詳細を確認する


「……どうやら外国人のようですね」

「んぐっ、外国人!?」
そう呟いた直後、聞こえていた彼女は一瞬むせかける

「ちょ、外国人って!?」

「イギリス人だそうで、名前は『リオン』」

「わあ、いかにも外国人っぽい名前。外国人って事は英語で喋るのかな?私
 会話するほど英語話せないよ?啓話せる?イギリス育ちだしいけるよね?」

「それは問題ありませんが、わざわざイギリスから日本へ来るということはあ
 る程度日本語を話せると思いますよ。もしくは既に仕える予定があるとか」

会話する間も、チラチラと時計を見る彩花を気にしていると慌てたように

「はわわわ、どうしよう」

「何故貴方のお父様はこんなことを考えたのでしょうか?」

「そんなの知らないよー。啓に先輩として指導をさせたかったのか、私に人馴れ
 させたいのか知らないけどまさかこんな事になるとか聞いてないしーーー!!」

彩花は叫ぶ、こんなことになるなんて想像してなかったと

「屋敷に行った時言ってたけど!自分には関係ないと思ってたのにー……!」

「私も同じ気持ちです。誰かに教わることはあれど、教える事は初めてな
 ので上手く出来るかどうか……。不安点はそれだけではありませんが」

「も、もうそろそろだよね?」


時刻はとっくに夕方に差し掛かっており、落ち着かぬ様子で彩花は視線

をさ迷わせたり、体をそわそわさせていた。少しでも安心させられないかと


「お嬢様、私がついていますので」

「あーもう君はいいよ!どうせその超イケメンオーラでこなしちゃうんだからさあ!」


そんな事を言いながらも。啓もまた不安を感じていた。彼女の言う通り、自身で

はなく彼女に対して。教えるという立場に若干の不安はあれど、何より彩花の

事に対する不安があった。その時、インターホンが鳴る


「っ!来た……!?」

「落ち着いて下さい。先ずは私が様子を見ますので」

「あ、アイネーム、マイネームイズ」

「……」

席を離れ玄関に向かうと、扉を開いた



「……」

啓が席を経って少し後、玄関から啓と男性の声が聞こえていた。落ち着かぬ様

子でいたが、どんな人か気になり席を立つ。そして扉を開くと廊下を覗き込んだ


「少し迷ってしまい遅れてしまいました」

(日本語うま!?)

「連絡を頂いたら迎えに行きましたのに」

「ご主人様が『これも勉強のうち』だと自力で向かわせたのです。地図を
 貰いましたが、中々難しかったです。何せニホンゴはまだ勉強中でして」

「そうでしたか。まずは中へ……」

「!」

瞬く間に、その姿は現れた

「あ……」

「おや?」

「あ、この方が神月家のご息女、神月彩花お嬢様です」

「!!」


慣れぬ物言いに久々の感覚が走る。そして啓に並ぶように立っている姿は、初めて

啓がここへ来た時の事を思わせた。自分より遥かに高い背、パッと見でも啓よりも高

いとわかる。一体何センチあるのだろうか、そしてそれだけで外国人だと思わせるが、

何よりも目を奪われたのは金色に輝くさらさらな金髪だった


「……」

言葉を失う。その感覚は『あの時』と同じだった。

(啓が来た時も、突然のイケメンにびっくりしたけど……)

高身長、金髪、蒼眼

(啓の時も思ったが……)

リビングに移動しキャリーケースを横に置き、青年は彩花に向かってお辞儀し

た。その動きは見目に劣らぬもので、一瞬時が止まったかのように我に返る


「リオンと申します。以後お見知りおきを」

「……」

(啓の時も思ったが……なんだこのイケメン!?)


不安がどこかへ吹き飛ばされ、今彩花の頭には重しが落ちたかのような感

覚だった。脳内はその叫び声で埋め尽くされ緊張とかそんな次元ではない

(えぇ!?)

学校での啓はその振る舞いや言葉遣いから『王子様』などと言われているが

(これ……ただの王子じゃねえか!)

「あ、よろしくお願いします……」

「あぁ、お嬢様はこんな感じな方なのであまり気に留めずに……きっとすぐ
 慣れると思いますよ。では部屋に案内しますね。あまり広くはありませんが」



しばらく経ち、戻ってきた啓は

「思いの外爽やかな方で安心しました。……お嬢様?」

「ねえ、啓」

「はい?」
どこか放心状態のまま問いかけられ返事をすると

「なんですかあの王子は?」

「え?王子?」

「何あの見た目的にTHE・王子なやつ?話し方も相まってただの王子じゃないですか」

「あぁ、確かに童話でよく見る王子は金髪ですね。ですが彼はただの執事見習いですよ」

あの日以来の、頭を抱える案件だった



「では私達は学校に行ってきますので、説明は帰ってきてからでよろしいですか?」

「分かりました」

(な、なんだこの会話……)

「昼食は先程渡した弁当で。夕方には帰るので、それでは行ってきます」

「……行ってきます……」

「行ってらっしゃいませ、お嬢様。Mr.ケイ」

啓に続き遠慮がちに言えば彼は清々しい程の笑みを浮かべ言った。そして

直後に彩花の顔は引き攣るのだった。再発した靄は校舎の中まで引きずられ


「彩花?どうしたの?」
教室で沙織や翔太が違和感に気づくと

「うわっ、なんか口から出てるぞ!」

「また何かあったの?」

「ふふ……ふふふ」

ゆっくり起き上がると

「ついに現実に現れてしまったか……」

「……は?」

「これからどうなるんだろう。もうそろそろ吸血鬼とかドラゴンとか出てきそう。む
 しろ異世界から何か来そう。あ、来てたわ。そうかいつの間にか二次元にいた
 わ。ははっははははは。これは夢だ気のせいだきっとまだ夢の中で……中で」

「お、おい?ほんとにどうした?」

「あれ、この流れ前もあったような……」


彩花と翔太のやりとりを見て視線をある人物に向けると、視線が合うなり

啓は苦笑いしていた。それを見た二人は『何かがあった』とは思えどそれが

何かまでは察しがつかずただただ首を傾げていた



「ふむふむ、掃除、洗濯は一通りできますね」


家に帰るなり啓の初指導は始まっていた。先ずはまだ未洗濯だったものを実

演しながら説明し、掃除も同じ手順でやっていく。それに対しリオンは手際よく

それらをやってのけた。彩花が見る限りではなんの問題もないように見え


「そろそろ夕飯の支度ですが、リオン、料理は出来ますか?」

「oh……料理は少ししか出来ないのです」

傍から眺めていた彩花にとって基準は啓だ。意外だと思っているとこちらの様子に

気づいたようで仕方のないことだと説明する。そもそも食事の支度は本来シェフや

料理係が行う事が多いですし、決して必須内容ではない


「そうなんだ」

「私は趣味でここまで出来ますが、学校の中でも科目として入っていなかったり
 、必要最低限しか学ばない所も多いです。やはり、本質とは異なりますから」

「で、でも、リオンさんは日本語上手だし、凄いよ」


多くの知識を必要とする中、英語、ドイツ語が必須科目で、その他は学校によってあっ

たりなかったりだと啓は話す。日本語が科目に組み込まれることはほとんどないとか


「じゃ、じゃあ、リオンさんはどうやって日本語を?」

「家の執事に教わったり、後は独学ですかね。まだパーフェクトではなくて、
 分からない言葉も沢山あります。まだまだ基本的な言葉しか話せなくて」

言われてみれば、会話の中に時々英語が混ざっていることがある。その発音

は流石本場と言うべきか、単語のはずなのに時々聞き取れないことがある


「では料理は私がするので、リオンはお嬢様と共に待っていてください」

「……ん?」

啓がキッチンへ向かうとふとさっきの言葉が引っかかった。ソファに座りながら
「リオンさん、さっき執事に教わったって言ってましたけど、あれ?」

「my homeの執事です。あぁ、my homeにも少人数ですが執事がいるんですよ」

「ということは、リオンはお坊ちゃまと言うことですか?」


啓が作業をしながら尋ねると彼は顎に手を当て唸りながら迷うように答えた

「んん、特にそういう訳ではないのですが、少々家が広いもので何人かいるのです」


しばらくが経ち、彩花はある事に気づき始める。始め見た目とそのオーラからとん

でも人間だと思っていたがある時は洗剤を入れ間違え、ある時は洗濯物を落とす。

そしてある時は靴のまま家に上がってしまったりとてんてこ舞いだ


(思いの外……普通の人と言うか)

そんな事を思う傍ら、ソファに座った彼は心なしかショックを受けているように見えた

数日が経ち、沙織から話を聞いた緋香琉は考え込んでいた。当然様子がおかしくな

ったものの、すぐにそれは治まりいつも通りになったという。だがなにがあったのか

は不明なままで、気になっていた。つい数日前にあった自分の事もあり


「これは本人に聞くしかない……!」

放課後、一度訪れたことのある為記憶を便りに緋香琉は彩花の家の近くに来て

いた。そして近づくと中から叫び声が聞こえてきた。その声に驚きながら覗き込むと


「あぁあぁリオンー!それ違うスイッチだよおおお!」

「うううぅー!」

「な、何だ!?」

突然の叫び声に驚くと玄関の扉から離れリビングにある窓に向かって駆け出した。

そして窓からシルエットが見えると彩花と見知らぬ外国人が何やら慌てていた。外国

人は掃除機を持っているが布を吸い込んでしまっているようだ


「スイッチ!スイッチ切って!」

やがて布が離れると外国人は疲れたように息を吐いていた。それから数分

後、彩花の元に足音を立てながらリオンが駆け寄り、何やら上機嫌な様子で


「お嬢様、お嬢様、紅茶を淹れてみました!」

「えっ、リオンが?」

彩花は一口飲むと、数秒後リオンは緊張した様子で問いかける
「どうですか?」

「んー……これ、家にあったやつだよね?」

「はい、そうです」

「いや、なんか、啓が淹れたものと何かが違うんだよね。少し苦い……ような」

「茶葉を入れた時間が長過ぎたのでしょうか」

「うーん……そうなのかなぁ……」


彩花も味の原因まで言及できるほど詳しいわけがなく、互いに疑問を浮かべ

たままやがて啓が戻ってくると一通りの話を聞いた啓は顎に手を当てながら


「少しお湯の温度が高すぎますね。後茶葉の量も多すぎます。この種類は高い
 温度で淹れると苦味が強く出てしまうのですよ。この茶葉だとこのくらいで……」

そう説明しながら再び、今度は啓が淹れたものが二人の前に差し出された

「そうそうこれ!いつもの味だ」

「茶葉によって適正温度がありまして、少し違うだけで差が出ますよ。全く
 の別物……とまではいきませんが後味や風味に変化が出てきまして」

「な、なるほど……」

詳しい説明にリオンは感心しており

「温度や湿度でも若干変わってきますので、その日その時の状態によって微調
 整する必要がありますね。とはいえこれはもう一流の給仕レベルの話ですが」

「うわ、めんどくさそ……」

「頂く方に最高のおもてなしをする為ならこのくらい当然です。紅茶とひとくくりに言え
 ど、その道はとても深いものですよ。流石に、その道を極めた方には及びませんが」

「よーやるよ……」


さも当たり前のように語る啓に対し、彩花は呆れながら呟いた。そこには若干の

尊敬の意もあり、啓はこれがAランクの証だと言葉を付け足した。リオンの方を向き


「すごい大変そう……」

リオンに向かって告げると彼は苦笑いし

「大変です。屋敷では人数の関係もあり、ほとんどする事が割り振られていたの
 でこんな色んな事はしませんでした。授業以外で紅茶を入れたのは初めてで」

「あぁ、そっか……」

「いつも掃除ばかりしていましたから、この間の買い物が無事できてよかったです」


リオンがこの家に来て数日。初対面の時のようなよそよそしさはなくなれど、未だ

慣れなさが残る。しかしそんな彩花に対しリオンは気にしないように彩花に話しか

ける。やがて彩花も若干ではあるが慣れ始め、そんな様子に啓は僅かだが胸を撫

で下ろす。しかし、完璧にはまだ程遠いが、リオンにはある欠点があった。それは……


「リオンすごーい!」

「……!今度はもっと大きなものを作ります!少し待っててくださいね!」

「リオン!」

啓の声に彼はハッとする

「また気が抜けてますよ」

「あ、つい……」

「リオンには忍耐力が少し欠けていますね。少し気を緩めると相手がお嬢様と
 いうことを忘れてしまう。執事たるもの、常に気を保つのは基礎の基礎です」

『お嬢様、dinnerの用意が出来ましたよ』

『good morningお嬢様』


普段は啓と変わらずいかにも執事な口調と振る舞いだが、それは執事として

作っているもの。時々気が抜け本来の性格が出るのか、友人を相手にするよ

うな行動や口調になってしまうのだ


「……oh great!」

「そんなに大した事じゃないよ。リオンも慣れたら出来るようになるよ」

「Really?お嬢様の為にも頑張ります!今度作った時は食べてくださいね!」

「うん」

「うーん……」

ここ数日、啓はよく唸っていた

「下手に堅苦しいよりリオン位の方が私的にはやりやすいけどなー」

「いえ、既に仕えた身ならともかく、彼はまだ学ぶ身です。どこに仕えても恥ず
 かしくない様指導はしっかりしなければ。何せここでは私が師である訳ですし」

「まあ、確かに言われてみれば?」
啓の言うことに一理あると頷くと

「優雅に冷静に務めを果たす。少し気を抜くと基本中の基本すら徹底出来ぬ
 のは少し問題です。中でも仕えるべき主の前であのような態度など……」

「う、まあ一般的にはそうか」

「執事やメイドは時には主人の付き添いで多くの場に出向くこともあります。結果他
 家の者と言葉を交わすことも多々あります。家名に泥を塗らぬよう、立ち振る舞い
 や所作は徹底して然るべきもの。決して裏の仕事だけとは限らないないのですよ」


かつて事実を伝えられ、納言麗奈と何度か関わり、現状を受け入れているか

どうかは別として、今のままではよくないのではないかという変化は生じていた


「じゃあ、リオンがいる間は私も『お嬢様らしく』するべきかな……」

「それは……」

少し影を落としながら呟く彩花の問いに啓はハッとすると言葉を濁らせる。

後ほど、すべきことを終え部屋に戻るとすっかり暗い外を見て啓は思う


(私も、この環境に慣れたことで少し気が緩んでいたようだ。彼が来たこ
 とにより、指導するに当たり基本が疎かになっていたことに気づいた)



「お嬢様、これはなんと読むのですか?」

「うん?これはとうふだよ」
あくる日もリオンの研修は続いた

「屋敷では、私が日本のものが見てみたいと言ったら、ヒロシ様に沢山の所へ
 連れて行って頂きました。お仕事のお供した際、近くにあった温泉に行ったり」

「ええ、いいなー」

「啓は有名な給仕の家系だそうですね?」

「えぇ、一応」

「my homeはカジノを経営していて、執事を目指すのは私が初めてなんですよ」


その言葉に彩花は表情を変え、啓もまた意外そうに声を発する


「カジノとはまた。社長ともあればそこそこ裕福でしょうに」

「……」

給仕の多くは家系で続くもの。よほどの事情がない限りは単独でこの道を選ぶ

のは中々に珍しい事だと啓は言う。啓の問に対し、彼は静かに話し始めた


「ずっと私は父の後を継ぐつもりでした。幼き頃から時々ディーラーとして
 手伝いをしていましたし、そのつもりか父から技を教えられましたから」

カードを扱うのは楽しいし、カジノで楽しそうに笑う人達の姿を見るのも好き

だった。楽しい、好きなものを受け継ぐのだからそこに不満や疑問もなかった


「ある日、私は手伝いでディーラーをしていたのですが、客同士のTroubleがありまして」

「……」


私を始め客も、他のスタッフも止めることは叶わず黙って見ているしかなかった。

その時、常連でもあるとある富豪が来ており、そんな主人に仕える執事がその

トラブルを止めたのだと言う。その時私は執事の行動に息をするのも忘れたか

のように見惚れた。屈強な体格で、いかにも力の強そうな男に恐れることもなく

あっという間にねじ伏せ、無力化させた姿はまるでMagicのようだった


「その時、私は初めて執事というものを、『主を守る存在』というものを知った。
 my homeにも執事やメイドはいますが、その日から感じ方が変わったのです」

「……」

「何度もあの客の執事の事を思い出し、私もあんな風になりたいと思うよう
 になった。その思いは日に日に強くなり、私は執事になると決めたのです」

「そんなことが……」

彩花が呟くと彼は笑い

「ふふ、不思議な話ですよね?皆、私が執事になると話した時、驚き
 ましたよ。主が、執事になろうなんて聞けば誰しもが驚くでしょうけど」

「後継ぎはどうしたのです?」

「強い決意を話したら、fatherは認めてくれました。別に子が受け継ぐと決まって
 いた訳では無いので、別の者を見定める、と。だからやれるだけやってみろ、と」

「……そうですか。そんな事もあるのですね」


啓は関わっていた周りの殆どが家系上始めから給仕を目指す者達ばかりだった。

学校もそんな人達ばかりが集まる名門校だったと話す。対するリオンは特別有名

ではない学校に通っているものの、とても楽しいものだと話す。


「知らない事ばかりで、大変ですが有意義でもあります」


いつか、あの時の執事のようになる為に。その言葉は勢いはなくとも内に

秘めた意志の強さを啓は感じ取っていた。そんな中呆然としていた彩花は


「……凄いね」

「まだまだですけどね」


そんな理由があったなんて、と驚きと感心の声を漏らす彩花にリオンは

そんなに凄いことではないと受け答える。だがそんなリオンを否定し



「これは応援せざるを得ないじゃないか!」

「え……?」

「あ、えーっと、エールを送るって言えば分かるかな?」



====================================

次回

とあるファミレスにて和葉は守護者仲間の緋香琉、クロスと話し込んでいた。

使命とは何か一同が考えさせられる中、家にいた沙織のスマートフォンに

メッセージが届く。制服に着替え学校に訪れると『彼女』は遊ぼうと告げる


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