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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

第24話、改めて見えた景色は

手に入れた僅かな可能性を求め様々な噂が立つ研究所に向かった翔太達。

そこでは現世の事情に精通した研究を行っており、研究員の責任者の男性は

薬を渡す代わりにある提案を持ち掛けた。彼らは見事それを成し遂げ……
__________________________________


次の瞬間、一色に染まっていた空間は何度も見たことのあるような、どこ

にでもあるような森の風景に変わり、いつの間にか森の中に立っていた


「ここは私達の精神世界。つまりなんでも思い通りになるって訳。好きなよ
 うに生きて、好きなことをして。もちろん咎める者なんて誰もいないわ」
更には彩花の周りに誰かが現れる。その顔は知らぬ人達だが、ソウルの言葉は続き

「皆が味方。敵なんてひとりもいない。虚空に消える魂の叫びも、誰かを憎む
 気持ちももういらない。全てが思い通り。何でも望みは形として生成される」


ソウルはただにこやかに話していた。そこにあからさまな悪意や裏の意図は感

じられず、彼女の言葉は真実だろう。その言葉は、大いに彩花の心を揺さぶった


「ここにいれば……願いが叶う……?」
特別才能がなくても、楽しくなくてもいい。ただ普通に、普通に過ぎて

くれればよかった。特別幸せじゃなくても全然よかった。けど、もしそれ

が約束されているならば、人はそれ以上何も望まないのだろうか


(……違う)

本当に望むのなら、楽しく笑って、幸せに生きたい。けどそれはなんだか

雲をつかむ話だと諦めた。普通以上を望んではいけないと思っていた


(でもここなら、それを望んでもいいの?)


隔てるものは何も無い。裏切りに怯えることも、様子を伺うことも、必要以上に

言葉を選ぶ必要も無い。もしそんな世界が存在するのなら、そこは天国だろう


「現世の人達が名残惜しいのなら、同じ人を作ればいいんじゃないかしら?」

「ソウル、君は一体何者なの?」
ふと彩花は問いかける

「ティウムとトパーズはまだ変わる前の自分。きみどりとパープルは経過の
自分。アクアとマリンはあの後の自分。あの人たちは紛れもなく、私の一部」

「……」

「だけどクリアといいソウル、君といい、二人はどこの私にも当てはまらない。
 ねえ、君は一体いつの私なの?私のどの部分を切り取った存在なの……?」

「……それは言えないわ」

「なんで?」

「常に全てを露わにしてしまったら、生き物が分岐し進化を遂げた魅力もなく
 なってしまうわ。魂の叫びは本当に必要な時だけでいいの。時には秘めた
 方が魅力的に映る。そうでしょう?人は見えないものに惹かれるものだから」

「……」

「けれど、時が来たら話すわ。私の『魂の叫び』を。最も、元の
 世界に戻ったら、が前提条件だけれど。さあ、どうするの?」


それから長い間、虚無の時が二人の間を流れた。ソウルは彩花の答え

を待ち、彩花は決断を迫られていた。時間の流れすら感じられない世界で


「戻る理由がないね。天国みたいなここと、あの世界。どっちがいいかなん
 てほとんどの人が分かるよ。別に、あの世界には思い入れもなにもないし」

「じゃあ、ここに残るのね?」




「伸ばした手は誰にも取られることは無くて、何も無い空気を掴んだ」

ぽつり、ぽつりと彩花は何かを話し始めた。それは最初は何の話をしてい

るのかわからないが、自身の中では記憶を思い返し、繋げられたものだった


「馬鹿だね。本当に……馬鹿だ」

「……」

「折角二度と……って固く閉じたのに。『これは誓いだ』って誓いまでしたのに。
 結局、私の意思ってそんなものだったのかな。あの時の気持ちは、忘れた気
 はないのに。馬鹿。本当に馬鹿。今でもこんな世界は、嫌いなのに…………」

「……」

「こんな風にした世界も、こんな風になってしまった私も」


彩花の声に顔を上げたソウルは目を伏せ心の中で頷き、呟いた

(そう。貴方は変わってしまったの。……少しずつ、何度も)


ソウルの声は心の中に押し留められ、彼女に聞こえることはない。ソウルも

また、彩花がこれまで成してきたことを知っている。再び震える声が聞こえた


「もう、『どうでもいい』なんて言えないじゃん……。あんなに、沢山の人に
 出会って、色んな事を教えられて……。こんな、どうしようもない人間に」

「……」

「わかってたよ。もう戻れないって」


(私には、『守るべきもの』が出来てしまった事を……!)


戻りたい。もう一度、あの人達に会いたい。それがどんなに自分を苦しめるも

のでも、迷わせるものでも、一片の思いは否定出来ないほどに強くなっていた。

かつての信念から変わった思いは心を縛り、苦しませている。しかし数秒後


「あぁ、そうか……」

一人呟き顔を上げると僅かに彩花の表情は笑みを浮かべた。それは何かを理解

したようなもので、いや、理解したことによるもの。しかし笑みには影が残っ

ていることにソウルは気づきながら彩花の様子を伺っていた


「これが、あの人達が良く言ってた、『守りたいもの』なのか……。漠然と
 してて、言い表せないけど、決して失いたくないもの……。……………」

「心の叫び。そんな言い方初めて聞いた気がするわ。そうね、貴方にはもう、あの
 頃の自分とは違うものを持っている。真実がどうかは貴方自身が定めるもの」

「……」

「なら、私が留める必要はないわね。色んな人が心に留めた『本心』を
 持っている。……これからは、少しくらい感じられるんじゃないかしら」


景色は変わり、視界が光に包まれた



「……」



ゆっくり目が開くと、白い天井が見えた。見慣れた素材による見慣れた天井は、全て

に安寧をもたらした。現状を確かめるようにじっとしていれば息を吐き、呼吸している。

そんな当たり前の事でさえ生きている『動作』であると感じていた

「……」

そのまま首を動かし横を見ると、見慣れた姿に彩花は無意識のままに僅かな笑みを

浮かべる。あぁ、戻ってきたのだと心の中で染み渡るように感じ、一方対する相手は

夢でも見ているかのような表情で固まっていた。やがて、彼は奥から絞り出すように


「お、お嬢……様……?」


目を丸くし、驚いていた姿は本来とは違ってあまりにも呆けて見えた。それから僅か

な間が経ち、扉が開くと真っ先に飛び込んだ緋香琉に続き、何人もの人が起き上が

った状態でいる人物を見ては駆け出した。真っ先に駆け寄った緋香琉は飛び掛かり


「うわああああ彩花ああああ!」

「うわっ」

「彩花……!」


緋香琉に驚きながらもそんな様子などお構いなしに彼女は抱きしめる力を緩

める気はない。。そして涙を浮かべながら手で拭う天王洲ゆかりの姿もあった


「うぅ……ぐすっ、彩花さん…良かったですぅ……!本当に良かったです……」

「ゆかりちゃんに朱里ちゃん……?」

「一が教えてくれたんだよ。良かったああ……!」


ゆかりを宥めながら、渋谷朱里が告げる。そして少し離れた場からは、六本木や

翔太の姿、紫音の姿が見えた。想像つかないような姿もあり、この光景に彩花は

無意識に目を丸くした。何故ここに、など様々な思考が浮かぶが再度聞こえた緋

香琉の嘆きの声や、それを窘めながらも同じく喜びを告げるクロスに彩花は言

葉を返していった。緋香琉達と言葉を交わす姿を翔太はかかった声に振り返れば


「君も行ってきたらどうかな」

翔太の横で沙織は飄々とした様子で告げる。そんな言葉を六本木も聞いて

振り向く中、あの条件に共に挑んだことから翔太も沙織に問いかけ返す


「お前こそ折角なんだから喜んで来たらいいだろ?」

「えー?」

「俺もお前も、命を駆けて成し遂げたんだ。……って言うと大袈裟かも知れねえが」

「あっははは」
翔太の渋った声に沙織は笑いを返しながら告げる

「別に大袈裟じゃないと思うなあ。世界やそういうのに比べたら大した事ない
 かもしれないけど、『友達』の命がかかってたようなものだし。私達にとって
 は一大事だったって訳だし。喜ぶのに大きさなんて関係ないんじゃない?」


「お嬢様……良かった。また、そのお姿が見られて私は……」

「あぁわああぁあ……!本当に、どうなることかと思って……ぇっ!」

「緋香琉!いくらなんでもうるさいって怒られ……怒られるわよ……!ぐすっ」

『見えてる?』

体の自由を奪われながらも、周りで発せられる叫び声や言葉に少し呆然としている

と、どこからか声が聞こえた。それは彩花の脳内にだけ伝わり、幻聴ではない。穏や

かで、少女と呼べるその声は彩花にとって馴染みのある、聞けばすぐに分かる


「っ……この声は……マリン?」

『『彩花』が消えて悲しみ、戻って喜ぶ人達がこんなにいるのね』

「!!」

マリンの声に、改めて辺りを見渡す。そこには確かに、これまでは見えなかった

景色が見え、後に続きマリンも見渡し目を細めた。慈しむように目を細めたまま

彼女は穏やかな口調でこう呟いた。その声に彩花はマリンの方を見る


『私は信じてみてもいいと思ったよ。皆を』



それから退院まで時間はかからず、異常もなく彩花は日常に戻っていった


「彩花さんん〜!」

「ゆかりちゃん、昨日も散々くっついて喜んでたじゃん……。今日もやらなくても」

「ほらほら六本木さんも!」

「えっ、いや僕はいいよ」


特別外傷はなかった為、目覚めて間もなく通常通りの生活を送れるようになって

いた。放課後他の人たちにも姿を見せてあげて欲しいという六本木の頼みに彩花

は『奇跡の手紙』の元に来ていた。ゆかりと彩花の姿を見ていた六本木だが


「六本木、ハンカチ貸そうか?」

「都庁さん!?泣きませんよ?!」

「む、そうか……。やれやれ、君も偶には天王洲を見習ったらどうだろうか」

「えっ」


ふと振り向けば都庁は呆れたようにため息を吐き

「君は良くも悪くも堅物過ぎる。時には感情を露わにすることも必要なのだぞ」

「いや、それ都庁さんにも言えるんじゃ……」


六本木の反論を受け流すように都庁は彩花に向かって声を投げかける

「しかし、話を聞いたときはどうなることかと。本当に良かったよ」

「……ありがとうございます」


ふとゆかりの元から離れ方向転換し六本木と都庁の元へ歩み寄る。その様子に

ゆかりや少し離れた場にいた他のメンバーも疑問を感じ彼女に集中すると彩花は

二人の前で立ち止まり、何故か誇らしげに、口角を上げながら告げた


「皆には、私の『悩み』を解決して貰わないといけないからね」

「……!」
その言葉に周りも含め六本木と都庁が反応する

「それは……」

「そう簡単に死んでやりませんって」



夕暮れの中、人々は歩き車が動く。そんな人混みに紛れるように翔太のまた歩いて

いた。その中で翔太は脳内に思考を巡らせていた。『止まることなく動く時間の中、ど

れだけの後悔をしてきただろう』結果的に良かったかどうかはまた別の話だが、これで

良かったんじゃないか。少なくとも、あいつを助ける為に起こした行動は、間違っちゃい

ない。俺は俺で、したいと思ったことをすればいいと心に留めるのだった




数日後の昼、向かいに座っていた青空が肘をつきながら呟く

「なんか、最近色々あった気がするなあ。折角戻ったと思ったらあんなことになるし」

「あんなこと?」

「ほら、戻ってきた瞬間学校中に自分の事を明かすし。戦えた事とか、家の事とか」

「あぁ」


あれから、学校に登校した彩花はクラスメイトを始め北条との関係性を表明した。

そして俺達を初めとして魔物と戦えることも。始めは驚かれていたものの、これまで

と変わった事は起こらなかった。それはクラスメイトである鈴木沙織の機転で障壁を

そこまで感じさせないように最小限に抑えていたことも理由の一つにあるだろう


「いや、でもいつも普通の弁当だし、周りと変わらないから気づかなかったというか」

「まあ、あいつ自身それを知ったのは割と最近だし、それまでは俺達と何も
 変わらなかったからなあ。こういうのも何だが、目立つタイプじゃないしな」






空に弾ける音が響き、それは始まった。校舎までの通路に出店が並び、様々な

名前が書かれている。そして、正門に看板が掲げられている中放送がかかる


『生徒一同、節度を持って楽しいものにしましょ。それじゃあ……只今より開始します!』
マイクから離れると夏目は振り返り

「皆もよろしくね。皆が楽しむべき文化祭だから、その為に私達生徒会と風紀委員
 がしっかりしないと。進路を視野に入れた中学生や保護者も多く来校するし、私達
 の動きも未来の生徒の要にもなるしね。でも当然の事だけど、皆も楽しんでね」
彼女の合図を元に部屋の中にいた生徒達が散る中、夏目は彩花の元に近づいた


「神月ちゃん!無事参加できてよかったね!」

「あ、はい。なんか……すみません。なんだか知らない内に始まってしまって……。
 結局割り振られた仕事はまりあできなかったし、クラスの準備も結局何も出来
 なかったし。結果的に文化祭だけ楽しむ普通の生徒と変わらないような……」

「んもー、そんなの気にしないの!まあ確かに、準備めちゃくちゃ大変だったけどねー

「す、すみません」


再度謝るとそんな彩花を見ていた夏目は突如彩花の両頬を引っ張り出す


「!??せ、せんぱ……!?」
何度も引っ張られた後、手が離されつねられた頬を抑えていると

「こうして文化祭が開けたのは、神月ちゃんや皆がここを守ってくれたからだよ?」


あの大打撃を受けた街の常態上、文化祭を延期したり中止判断を下した学校

も存在していた。そしてこの学校も最初は中止にする予定だったらしい。しかし

会長である彼女の必死の説得によって、予定通り開催される運びになったらしい


(一体どうやって……)
そんな事を考えていると再び彼女から声がかけられる


「でも、大変だったのは確かだし……」

「……」

「ふふん、その分今日はきっちり仕事してもらうからね!追加の分まで!」

「……は、はい」


開放された校舎には他校の生徒を始め地域の人などなど、多くの人が行き

交っていた。呼び込みの声や見て回る人達の声で賑やかさは当分絶えない

だろう。呼び込みの声が外で響く中、一ーAの教室では既に行列が出来ていた


「お帰りなさいませ、ご主人様!」

「わあ、ノリノリだねえ」


いつもと違うメイド服に身を包んだ沙織に対し、新宿はにこやかに告げる。後方

にいた人達に視線を向けると席へと案内しながら沙織は新宿に問いかけた


「知り合いですか?」

「あぁ、仕事仲間みたいなものかな」

「新宿、お前ってやつは……」
一人の女性、都庁が小刻みに震えながら告げると彼は対照的に穏やかな口調で告げる

「やだなあ、都庁。ここには六本木もいるんだよ?」

「そうだったな……って誤魔化すな。知り合いのようだが、お前のことだからナ
 ンパで知り合ったんだろう。お前は仕事云々以前に大人としての自覚をだな」

「俺をなんだと思ってるのかな……。彼女は新宿に住んでて、近所の親戚みた
 いなもの。お祭りの時も手伝いに来てくれてるし。何年も前から知ってるよ」

「祭りって、新宿さんが毎年お手伝いしているあの?」

「そうそう」

「はい、メニューです」


話していると再び沙織が現れメニューを差し出し、ゆかりがメニューを眺めて

いる間新宿や都庁はメイド服や執事服の生徒達を見ながら問いかける


「六本木はどこにいるんだ?」

「沙織ちゃん、六本木はどこに?接客をするのは午前だって聞いてたんだけど。
 ま、俺は男のコスプレなんて全く興味無いけど可愛い子ちゃんは興味あるし」

「相変わらずですね。あ、メニュー決まったら呼んでくださいね」
彼女はメニューを聞きながら

「そういえば六本木君と知り合いなんですか?彩花の時も驚いたけど、六本
 木君と新宿さんはかなりキャラが違うような?意外というかなんというか」

「あぁ、まあね」

「あ、六本木さんです!」
ゆかりが姿を見つけしばらく後、再び沙織は盆にカップを乗せながら現れる

「コーヒーと、クッキー紅茶セットと、アイスティーです」

「あぁ。ありがとう。ところで、彩花ちゃんはどこに?」

「彩花?」

「同じクラスだったよね?」


祭りの時の会話を思い出しながら新宿が辺りを探していると沙織は告げる


「あぁ、彩花は午前じゃないんですよ。それにキッチンですし」

「ええ、そうなの?残念」

「あはは、彩花が頑なにメイド服を拒否してたのと、色々あって練習が全く出来な
 かったんですよ。私も面白そうだったんでなんとしてよやらせたかったんですけど」

「あぁ。確かにそうだよね」


(な、なんかこの子、新宿に似た何かを感じる。いや、渋谷か?)

新宿と沙織が話している間、それを片耳で聞いていた都庁はそんな事を思う。

一方ゆかりは目が合った六本木に向かって手を振り、彼もまた振り返している


「今は、カメラ撮影の手伝いで校舎内を回っていると思いますよ」

「そっかー。なら、会うのは難しそうかな」

そんな時、校舎内を歩いていた彩花は時折立ち止まり校舎外の様子にカメラを向

けていた。本来は生徒会の腕章を付けるべきなのだが、訳あってつけていない

「次どこ行く?」

「お化け屋敷とか?あ、私メイド部と執事部が気になってたんだ」

「あ、私も。並んでるらしいし、午後からはもっと行列できるだろうしもう並ぼっか」


そんな会話をしながら通り過ぎる一般の人達を捉えると、視線を戻した。当たり前

のように聞こえる人々の声、当然のように佇む校舎や校庭。当たり前のものが、当

たり前であることを噛み締めるように彩花は人々を眺めていた


「広くてどう行けばいいかわかんないなあ」

「もう、お兄ちゃん!先ずは六本木のクラスに決まってるでしょ!今執事やってる筈だから!」

「えーと、予備室に行くには……」

そんな中、少し違う校内でパンフレットと睨み合いながら渋谷兄妹も歩いていた



時間は流れ正午に差し掛かった時、耐えぬ人の中隣の部屋に移動すると翔太は

座ると勢いに任せ椅子にもたれかかった。丁度分担が入れ替わる時間帯なのだが


「つっかれたー」

「想像以上に人が来てびっくりした。ここの名物でありレベルの高い執
 事部があるからこっちはそんなに来ないと思ってたんだけどなあ……」

「全くだ」
翔太に並んで青空がため息を吐いた

「はぁ…。午後もやばいだろうなぁ」

「一番やばいのは一時からだろ。なんたって売りの『本物の執事』が出るんだから」

「でもあいつ午後全部入ってるだろ?明日もやるし。受けたあいつもあいつだが」


その時、扉が開くと沙織、亜理紗がやってきた。その後に続き納言麗奈と彼女

の執事由良の姿も見え、突然の登場に翔太と周りの生徒たちは疲れが吹き飛

び背筋を伸ばす。瞬時に準備室は緊迫した空気が張り詰めていた


「皆お疲れ様ー」
そんな彼女達の背後から袋を持った沙織が現れ何の気にもせず問いかける。


「丈夫性、機能性共に一級品の布で作られているのですから、それに見合っ
 たものでなければ許しませんわ。見た目は……及第点といった所かしら」

「納言さん、それはさっき発表された中間発表をみたらわかるんじゃないかな」

「中間発表?」

思わず気圧されそうな雰囲気を醸し出す彼女に対し、沙織は臆せぬまま話す。

その様子は翔太を始めクラスメイト達も驚きと尊敬を感じながら聞いていた


「ふふん、午前だけでも人が並ぶくらいなは盛況だったし?皆物珍しさで来たん
 だろうけど、中間発表でなかなかいい感じだったよ♪私達の想像以上だし」

「……由良」

「中間発表で1ーAは一年生では首位、全体的にも上位に入っています」
由良の言葉に教室内がざわめく

「中でも、素人でありながら出し物とは思えないクオリティなのがポイントが
 高く、楽しめたという意見が見られます。他には本物より規制と緩和がされ
 ているので、一般の方も比較的入りやすいのも評価点だと書きこみが」

「な、そんなことわかるのか?」

翔太が驚くように問いかけると沙織がスマホの画面を見せながら
「学校のホームページに学校が用意した文化祭専用にサイトがあるんだよね。
 有名所とか、この表彰形式ももう伝統だし?ここに評価とか書き込めるわけ」

「宣伝にも使えるし、クラスや部活が多い以上回るものを絞る人も多くて、口
 コミみたいにここに書き込まれた評価を見て行き先を決める人もいるわ」

「へ、へえ、そうなのか」
沙織と亜理紗の説明に関心していると青空が亜理紗に訪ねた

「という事は、うちも宣伝したのか?」

「当然。レベルの高い『執事部』がいる以上優勝は厳しい。ならいかに宣伝するか、よ」

「……」

「宣伝次第では、執事部目的で来た人が面白半分で来るかもしれないから」

「そこで、文化祭レベルーって思ってた人が想像以上にクオリティ高くてド肝抜か
 れたら、投票してくれるかもしれないでしょ?掲示板はSNSとも連携出来て書き
 込んだ内容をそのままSNSに投稿出来ちゃうわけ!タグなんかもあるし……」

「……」

「そこからの掲示板への書き込みで、更なる集客が出来たら、その繰り返しよ」

「……お前ら、ガチじゃねえか」



「努力、はしているようですわね」


ふと、納言麗奈の声が聞こえ彼らの視線は一気に引き戻される。彼女はいつも

のように威圧的に言葉を発するが、腕を組んだまま翔太や周りの様子を見ると


「ですが、文化祭は楽しむものと聞きましたわ。貴方達も少しは楽しんだらど
 うかしら?どうやら、この学校には見る価値のあるものも多いようですし」

「勿論楽しむよ?今日の私の出番は終わったから今日はもう見て回るつもりだし」

「なら良いのですが」

すると、ふいに沙織は笑みを浮かべた

「そういえば、納言さんのクラスは優勝より楽しむ事を優先するんだってね。納
 言さんの事だから、猛反対すると思ってたよ。意外というか、丸くなったね?」

「なっ……!?な、なにか問題でも?!」

「いや?」

「ひ、広い視野とこの催しの意図を理解できてこその催しですから!」

「まあ、楽しみなよ。見るべき、行くべきものは沢山あるんだしさ」

「ふん。私は、これで失礼させて頂きますわ」
納言麗奈が教室を出て、入れ替わるようにクラスメイトの女子が抱えるように袋を持って入ってきた

「午前お疲れー。差し入れ持ってきたよ」

「本当?」

「うん。ジュースと焼きそばとたこ焼きと、他にも色々。皆昼ご飯まだでしょ?」

「助かるわー」

「すごい人だったもんね。想像以上っていうか……」

「皆言ってるよ。あ、私も面白い差し入れ持ってきたから皆で食べて食べて」



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次回

文化祭は初日を終え二日目に差し掛かっていた。彩花は『人が多くて見て回る

気が起きない』とぼやく中、クロスは見る価値を語る。平和が取り戻されたと思っ

たのも束の間、ある日彩花の前に力を与えた張本人エリアが現れる……



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