INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

第36話、変わりゆく未来

夏休みが終わり学校が再開しアイドル候補生という変わった留学生が彩花達の

クラスにやってくる。その正体は音楽業界では有名な『白桜律』家のお嬢様。一方

翔太は夏休みに会った同級生から衝撃な言葉を聞き大会辞退を提案するが・・・
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「どうしてそこまで出ようとする?バトルなら大会じゃなくても・・・」

「・・・あんたには関係ないでしょ」


視線を外したまま告げるがさっきまでの元気も覇気もなく、苦しさが襲う


「大体、小学校の時の人達なんて私の事覚えてないでしょ。ほら、よく言うでしょ?
 苛められた側は覚えてても苛めた側はきれいさっぱり忘れてるってテレビでも」

「・・・覚えてた」


ぽつりと呟かれた言葉に彩花は反応を示す


「帰り道、お前の話が出て・・・だから存在は覚えていると思う」

「・・・ふーん」

「また何が起きるかわからないし・・・出るのはやめるべきだ」


同じ事を繰り返したくない、あんな光景は二度と見たくないと口調を強める。出来る限りなら

問題は回避するべきだと当然の事をしているつもりだったが直後聞こえた言葉に顔を上げた


「・・・なら、また『逃げる』の?」

「っ!?」

「あの時は対抗手段がなかった。耐えるしかなかった。だから逃げるしかなかった」



当時の事を思い出したのか委縮すると僅かに震えていた。自分を囲み嘲笑う周囲の声。それ

から自分に関係なくても笑い声が怖くなった。自分の事を笑われているのではないかと周囲を

気にするように、必要最低限以外人と関わらなくなった。あの事は、忘れられる訳がなかった


「今でも忘れない。あの時の事は・・・一生忘れない」

「・・・・・・」

「本当はどこかの主人公みたいに言い返したかったけどそんな勇気はないし。それを
 したところで悪くなる予感しかしなかったから。逃げた時も、自分の弱さにむかついた」


流した涙は悲しさの涙じゃない。自分に対する苛立ちと、悔しさと恨みの涙


「・・・ってあんたにこんな事言ってもしょうがないか。あんたも『そっち側』だったわけだし」

「っ・・・」

「まあ、そんなこと今更言ってもしょうがないんだけど。正直あんなのとは二度と関わり
 たくないし顔も見たくない。けど・・・今なら対抗手段がある。やっとここまで来たんだ」


呼吸が浅くなっていたものの一度深呼吸すると、少女は告げる


「また『逃げる』なんてあり得ない。折角のリベンジ・・・逃すわけにはいかない」

「!!」

「だから、私は出る」



高校ポケモンリーグは一般の部活の大会とは違い開催日は平日になる。というのも

一般生徒も参加する事から部活動の事を配慮し休日を避けて設定されているらしい


「ポケモンバトルって何だっけ」

「さあな。決勝は普通のタッグバトルらしいけど」


平日ということもあり会場に来ていた彩花と翔太はモニターを見上げていた



「次の試合は2時からだっけ?・・・あ、お茶なくなった。買ってくる」



背を向け歩き出す姿を見送るとしばらくの後、背後から声が聞こえ振り返る


「ここまでは順調に勝ちあがったみたいだな」

「そっちもな」


雄二に対し言葉を返すと様子を伺っていたもののやはりその名は出た


「それにしてもあいつ本当にあいつなのか?変わり過ぎだろ」

「・・・・・・まあな」

「しかもここまで勝ちあがってくるとか・・・あの時じゃ到底考えられないな」


至って普通の会話だがかつて彼らも加害者であるが故平常心ではいられない。誰

もが自分と同じ考えを持っている訳でもなく今どう思っているのかは想像もつかない

別の場、ボタンを押しペットボトルが落ち取り出すと背後に気配を感じ振り返る


「・・・!」


視線の先には僅かに見覚えのある顔。うっすらと面影を残した人物はこっちを見て言う


「本当だったんだ。へえ」

「・・・・・・」


男の声に対し答える事はなく、ペットボトルを握る力が強くなると再び男は口を開く


「覚えてる?」

「・・・・・・」

「どうやら覚えてるみたいだな。ここで会うとは偶然だな?」



表情を変える事はなくとも心の中は平常心ではない。視線を逸らすが足は動かない


「こんな偶然もあるもんなんだな。まさかあの翔太と組んで出場してるとは」

「・・・・・・」

「あの時とはまるで別人だな?いや・・・そうでもないか?」


その時、青年の雰囲気が変わった事に気づくと硬直していた中一歩下がった


「こうやって会えたのも何かの偶然、仲良くしようぜ?」



その時、突如頭上にひんやりとした何かが伝った。時差を持って滴る液体に気づき背後

に振り返ると目の前にいた人物とは違う人・・・かつて同じ学校に通っていた一人の姿が


「おーっと手が滑った。けどまあ、まだ暑いし丁度いいだろ?」

「っ・・・」


前後に人がいて逃げようにも逃げられない。そしてフラッシュバックするようにあの時を思

い出すと心の底から湧きあがる恐怖心にコンクリートのくぼみに引っかけバランスを崩す


「いたっ」

「あっはははだっせえ!」


今度は正面にいた男子生徒が笑う。けどあの時とは明らかに反応が違った


「そんなので本当に準決勝まで勝ちあがったのかよ?嘘だろ?」

「ほとんど翔太の実力なんじゃねーの?」

「・・・私だって・・・」


消え入りそうな声は2人の耳には入らずにいた時、目の前を何かが遮った


「神月さん!」

「彩花!・・・何やってんだよ」

「なっ・・・」


目の前に現れた人物に驚いたのは自分だけではなく、2人も驚きの声を上げる


「まだそんな事してるのかよ」

「んん?いつからお前らそんなに仲良くなったんだ?まさか・・・」



何かを言いかけると彩花と翔太は反応するが笑みを浮かべたまま隆弘は告げる


「まあまあ、どうせ決勝に出るのは俺らなんだから楽しくやろうぜ?」

「なんだと?・・・勝つのは俺達だ」

「よく言うぜ。そんな腰ぬけと一緒で勝てると?・・・まあ、せいぜい楽しみにしてるよ」



背を向けると手をひらひらと振り去っていく。姿が遠くなった時翔太は違和感に気づいた


「ど、どうして啓がここに・・・」

「お嬢様の晴れ舞台とあれば学校など休んででも見に行きますよ」



と耳打ちすると振り返り少し離れた場にいた翔太の方を見た


「昼休みの途中で上田君に遭遇しまして見当たらなかったので共に探していたら・・・」


あの場に遭遇した。不幸中の幸いとは言えどあの場を見られたのは屈辱以外

のなにものでもない。弱さを見せるのは何よりも自分自身が許せないことだ


「彼らは一体・・・いえ、それよりも・・・」

「やっぱり辞退するべきだ」


立ちあがると振り返り告げる。それはあの時よりも強く迷いのない言葉だった


「今からでも遅くない」

「・・・嫌だ」

「なんでだ!?」


僅かに発せられた拒否の言葉に怒りを露わしたような叫び声が室内に響いた


「そこまでする必要があるか!?逃げたって・・・たまには逃げたっていいじゃ」

「嫌だ。こんなの・・・大した事ない」

「なっ・・・?」

「『あの人』達に比べたら・・・こんなの全然大した事ない」



何の事を言っているのかいまいちわからないが頭からタオルを外すと顔を上げ

告げた。その姿を見て翔太はこれまでと雰囲気が変わったことに気づいた



今までずっと、自分の過去は壮絶なものだと思っていた。普通の人とは違う

深く、深い過去。この国の中で一番不幸なんじゃないかって思ったこともあった


「色んな人と出会って、経験して知った。世界が滅ぶわけじゃなければ死ぬわけ
 でもない。私が今まで経験してきた事なんて・・・大した事ないよ。笑えるほどに」



今までそう思い塞ぎ込んでいたのが恨んでいたのが馬鹿みたいだ




「この国は平和で、勉強とか、そんなことだけ考えて生きていられる。明日生きられ
 るか、明日も生き残れるか、仲間と共に生き延びられるか考えなくてもいい世界だ」

「お前は一体何を言ってるんだ?」






「・・・もう二度と・・・逃げたくないんだ。そのためにここに来た」

「・・・・・・」

「どうしてここ(東京)に来たかわかる?ここに来たのは・・・過去と戦う為だよ」

「!」


今までずっと逃げてきた。現実から逃げ、トレーナーとしての旅の時も逃げる

ように知り合いがいないと思われる遠い地を選んだ。今だってやめたいと思う



「でも逃げた先で出会った人たちは理不尽な運命から抗って、僅かな希望を
 信じ自ら広げて掴んだ。自分なんかよりずっと過酷で・・・辛いはずなのに」

「・・・・・・」

「壮絶な過去と向き合って戦った人達を見て・・・私も戦わないとって思った」

「けど・・・」


彩花の頼みで啓が席を外すと数秒の沈黙の後彩花は口を開いた





「はは、私は弱いままだ。まともに言葉も返せない」




(俺には・・・その苦しみはわかってやれない。わからない)



理解しきれない事に悔しさを感じた。そんな間も彼女は言葉を続ける



「言葉じゃ返せないから・・・行動で示すしかないんだ」

「・・・・・・っ」

「あんな人達に負けたくないから。その為に、今まで・・・・・・」




「負けたくない・・・か。お前は昔から負けず嫌いだったな」

「・・・そうかな」




「そうだよ。テストの点数だって、身長だって・・・なんでもかんでも張り合ってただろ」

「・・・そんなのも、すっかり忘れていたよ。そんな・・・楽しかった日の事、なんて・・・」


(そうやって泣き虫な所も・・・あの時から変わっていない)



それから数分後、止まった涙をぬぐうと意を決したように握った手の力を強めると口を開いた



「・・・話しておくことがある」





「午後の試合見たかったけど・・・悪かったね」

「そんなの気にするな。・・・」

「啓」

「はい」

「啓の事・・・翔太に話しておいたから別にお嬢様でも構わないよ」

「え?」


唖然とした様子で目を開くと隣にいる翔太は半ば呆れたようにため息をついている


「後日の準決勝、決勝戦は希望者が観戦に来ます。それでも出るのですか?」

「・・・・・・」

「・・・ご自身で決めた事に口出しするつもりはありませんが・・・当日は私も同行願います」

「・・・そう言うと思ったよ。けどまあ・・・いいよ」


こうして準決勝戦、決勝戦当日がやってきた。出場校の多くは希望者を募り平日で

あるにも関わらず授業そっちのけで応援に来る。無論桜丘高校も同じくである。そして

この大会にはテレビ局から多くのメディア関係者も集まっており会場は慌ただしい



「準決勝のルールは1対1ずつの勝ち上がりのようですね」

「どっちから先に戦っても構わない。どっちかのタッグの両者が敗北した時点でバトル終了・・・か」


控え室にいた2人の前で啓がルールを告げると彩花の声が返ってくる


「相手が相手だし・・・俺が先に行く」

「・・・・・・」

「俺が試合を終わらせればいいんだろ?任せとけって」



振り返りざまに肩に手を置くと告げる。一人なら辞退していたかもしれない。これほ

ど頼もしい存在がこれまでいただろうか。だからこそその言葉に対し静かに頷いた


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次回

やってきた試合当日、啓と別れその時を待つ彩花と翔太だったがこれまでの事を

思い返し告げる。彼らを目の前にしやはり彩花は動けないが翔太が先発として勝

負を挑む。しかし準決勝まで勝ちあがってきただけあり実力は並大抵ではなく・・・


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