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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログ

第14話、自身という真実

魔物に襲われた少女たちを助けたものの、翔太はそこに潜む影を見る。日は

経ち、備品確認の為部活動が休みになった翔太だったが体育館に彩花が入

っていくのを見る。気になり後を追いかけると再びアクアが現れる。突然の出

来事に彩花も混乱する中、アクアは憎悪の刃を翔太に向けるのだった
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「……」


部活動もなく、人気もない体育館の中。いつもより静かで広く感じるこの場

が今は緊迫感が充満した場と化していた。二つの刃は今も交わっており


(アクア……)


目の色を変え、殺意を露わにしたアクアは目の前の標的しか目に入ってい

ない。対する翔太はどこか迷いを感じられるように見えどアクアの刃を受け

止めていた。これまでアクアが東京に来てから姿を現したことはなく、誰も

アクアの存在は知らないはず。知っているのは外の一部だけのはずなのだ


(どうして、翔太とアクアが会話してるの?しかも)


しかも会話の流れからして、今に始まった会話ではない。翔太もアクア

の事を知っているし、分からないことだらけだ。アクアはともかく何故翔太

がアクアを知っているのか、二人は一体何の話をしているのか。混乱と

困惑の中、ただ今言えるのはアクアの状況を止めなければならない事



「アクア、訳がわからないんだけど。ちゃんと今の状況を説明してよ!」


その問いかけに応えたのは、アクアではなく翔太だった


「こいつは、俺がこの場にいる事が気にくわないらしい」

「え……」

「それでこいつは俺をこの場から追い出そうとしてるって訳だ」

「……」


アクアの方を向くと未だ力を緩める気もなくアクアは告げた


「あんな事をしておきながら、さも過去をなかったかのように関りを持
 とうとするなど万死に値する。視界に入っただけで不快だというのに
 、挙句の果てには個人の問題にずけずけと付けこみやがって……」

「……」

「罪悪感がないのか、過去に貴様らがしたことを忘れたのか」

「俺は忘れてなんかない!」



言葉に対するアクアの反論に彩花は聞いているしかできなかった



「ただ覚えているだけで納得できるとでも?貴様らの記憶とそれを受
 けた者の記憶は天と地の差。受けた傷は消えず、忘れることもない」

「……」

「一生消える事はないのだ。あの日俺達は絶望を知った。その気持ちが
 貴様らに分かるものか!分かったつもりでいたとしても、想像と真実が
 並ぶ事はあり得ない。それは俺達を侮辱する偽善でしかない……!」

「うあっ」


互いに剣を弾くと間合いを取る。有効な解決策も考えられず浮かばな

いまま、翔太も刀を構え直した。この僅かな間でアクアの強さが本物

だということをひしひしと感じ、その中に僅かな恐怖もあった



本人にはないはずの力、持久力。アクアを始め『彼女達』の特徴だとし

ても、それは想像を遥かに超えるものだった。そして何より、言葉が痛い

。針で何度も刺されるような、傷口をさらに抉られるような感覚だった


「全てを失い、裏切られ、普通の人間でいられなくなった痛みが!本
 来綺麗だったものすらも汚れてしか見えなくなったこの苦しみが!」

「……アクア……」


アクアの言葉は彩花の心にも突き刺さっていた。それは翔太とは異なり


(……きっと皆がそうじゃないってわかっても、あの時からそうとしか
 見られなくなった。優しさも、喜びも、全て偽りのものに見えてしまう)


「そんな俺達のことも知らず生きた貴様らが、こうして何食わぬ顔で生
 きている。こうしてお前を見るとあの時と、その後ずっと秘めていた憎
 しみ、怒りの感情を思い出す。ずっと復讐したいと思っていた感情を」

「……。アクア、でも……」


アクアは切っ先を天井に向け掲げると、意思に呼応するように剣は光

に包まれやがて槍によく似た杖へと姿を変えた。それを握り直すとアクア

は棒の端を勢いよく地面に叩きつけた。直後翔太の視界は歪み始める


「……!」

「なっ……!?」


叩きつけた先端から体育館全体にわたって視界が歪み始めると見知ら

ぬ光景へと変化していく。火柱が至る所に噴き出て、呆然と立ち尽くして

いると何かの気配に気づくが、それが何かを判別するより先に身体の自

由は奪われた。虚空から伸びた蔓が腕や足など至る所に絡みつく


「くっ、動け、ない……」


蔓を解こうとあれこれ力を入れるが頑丈に縛られ緩まる気配すら感じられ

ない。更に違う気配に気づくと見上げた先にアクアの姿が現れ、前方にいた

アクアが一歩、また一歩と近づいてくる。そこには握られた剣も目に入り

やがて、翔太まであと数歩、という所でアクアの姿は止まった



「……俺を、殺すのか」

「殺す?そんな生温いことをするものか。俺達が感じたように絶望
 と、恐怖を知れ。そして目に映るもの全てが信じられなくなればいい」

「っ……」

「そうすれば彩花の気持ちもわかるだろう。俺の言葉の意味も」


青い目は冷ややかで、底のない深海を表しているようだった


(もしくは、闇の色……)


やがて、全てを察した翔太は抗う力を止め、目を閉じた


「……好きにしろ。それでお前が納得できるならな」

「……」

「こう身動き取れないんじゃ、もう俺には抗うことはできない。言われ
 ればあいつが受けた本当の苦しみを解る事は不可能だ。俺はそう
 いう経験がないからな。だから、当事者であるお前の意思に従うよ」



握られた剣はゆっくりと持ち上がり、やがて翔太の頭上に振り上げられる





「……俺の意思はあいつの意思。永遠に、闇の中を」

「アクアっ!」



その時、どこからか声が聞こえた気がした。それを現実のものとする

ように直後刃と刃がぶつかる音がした。そして、自身に変化はなく顔

を上げると、アクアが振り上げていた剣は違う剣に引き止められていた



「……!?」

「っ!?」


アクアも動揺しているように刃を受け止めていた。その正体は一人しかい

ない。緑色に輝く宝石をはめ込んだ剣を握り、彩花が剣を向けていた



「何を……」

「……」

「……っ!」


次の瞬間、何かを察知し目を見開いたアクアは押し返すと距離を取った



(今の目……)


「……」


言葉を発することはなく、ただ彩花は剣を持ったまま立っていた


「……」

「……」


無言が続き、一命を取り止めた翔太は今の状況を理解できずにいた。振り

かざされた直後、彩花がアクアに剣を向け、それをアクアが受け止めたのだ

ろう。だが、刃を交える彩花の感情は二人にも読めぬ表情をしていた



「……」


怒りのような、だが何かを迷っているような苦悩が織り交ざった表情


「アクア……」

「……俺は、あの時誓った事を……」


やがて刃が離れると剣を下ろし、眉を下げ彩花は口を開く


「……そうだね。それは紛れもない私の感情だ」

「……」

「だけど、させないよ」



(俺は……お前自身の答えを聞きたくて。そうじゃなきゃ信じられない)



「何故だ。今だって全くないわけじゃない。そこに存在がある限り……」

「……アクアは私の一部。確かにアクアは私の意思で存在し、私の意
 思を引き継いでいる部分も多い。だけどね、こんなのは私じゃないよ」



言い聞かせるように、またアクアも剣を振りかざすことなく耳を傾けていた



「過去の恨みがあったとしても、ここまでの真意を見ても一方的に恨み続
 けるの?これまでの言葉に全くの嘘だと決めつける理由はどこにもない」

「……」

「全ては信じられなくても、どこかで本当の事だと信じられる部分も
 あった。こんな一方的に陥れようとするやり方は私じゃないよ!」

「!」



やがて周りにあった火柱は消えていき、翔太の縛った蔓も消えていき

身体の自由が戻ったことに気づく。そして風景は本来のものへ戻った



「答えてくれ。俺はお前自身から答えを聞きたいんだ!」

「……」

「きっと今も思い出したくないことを思い出させてるかもしれない。で
 も、ちゃんとお前自身の答えを聞かなきゃ納得できないんだ……!」

「……」


タイミングを図り今しかない、と感じた翔太は叫ぶ。それに対し

彩花は翔太の方へ振り向くと目を伏せる。答えを聞くことに対する

恐怖を感じながら翔太は再び先程尋ねたことを繰り返した


「許されたって俺が一方的に思ってるだけなのか?今でも、俺がここにいるだ
 けで苦しませているのか?こうして話しかける事すらも……許されないのか?」

「……今でもあのことは忘れない。忘れたくても忘れられない。アクア
 の言った事はほとんど真実で、それは一生消えることない傷だよ」

「……」

「あの『過去』のせいで、私達の世界は酷く歪んだ。私も優しさの欠片
 もない冷たい人間になった。全ての善意に裏があるように思えて、
 きっとこの人たちもそのうち裏切るから信じないほうがいいってね」


きっと今までかけられた言葉の中には真意での厚意や心配もあった

だろう。だけどそれが本当か、嘘の言葉かすら判断がつかなくなった。

生きているけど死んだような、まるで生きた屍になった感覚だった


「信じていたもの、当たり前にあったもの全てが無くなって、誰も信じ
 なくなった。信じるから裏切られる。仲良くなるからその時辛くなる。
 生きる上で誰かと関わる事は避けられない。なら最初から信じなけ
 ればいいじゃないか。そう思うようになった。思い込むようにした」

「……」

「……だけどね。だからってこんなことしていいわけがない」


例え変わることのない過去があったとしても


「私は今を見て判断する」

「またそいつが裏切る可能性があったとしてもか?」


冷ややかな目で彼女は告げる


「もしまた裏切られたらどうするつもりだ?」

「……!」

「……」


アクアの質問に対し、彩花は驚いた様子でにすぐに答えは出なかった


「それは……」



翔太は何も口を挟めないまま彩花の紡ぐ言葉を待つ


「こいつが二度と裏切らないという確証が持てるのか?」

「それは……」



答えはでぬまま、時だけが過ぎるとアクアは手から剣を消滅させた。

いつの間にか全身に感じる殺意が薄れており、翔太の方を向くと


「……例え彩花が許したとしても、俺は許さない。絶対にな」

「……」



そう言い残すとアクアはその場から姿を消した。本来の静けさを取り

戻したにも拘わらず、体育館内は気まずい雰囲気が残ったまま時だ

けが過ぎて行く。そんな中翔太は体育館中を見渡した



(あれだけの戦闘があったにも関わらず、どこかが壊れたってことはないか)



偶然なのか、アクアが意図してそう立ち回ったのかはわからない。そう思

考が行きついたのは以前も感じたアクアに対する違和感。恨みを持ちなが

ら、それは完全な悪には見えなかった。あの女学生を助けたのが証拠だ



「ええと、その……」


すると静寂を破る声が聞こえ振り向く。そこには申し訳なさそうに告げる姿が


「……ごめん……」

「その……別に翔太を苦しめたいわけじゃないんだ。ごめんね」

「……」




「確かに私はあの時、毎日のようにあの人達を恨んで、出来る事なら同じ
 目に合わせたいって思ってた。生まれた場所を恨んで、年を恨んで……」


彩花は呟いた。違う時に生まれていれば違う人生だったのかな、と


「誤れば許されるっていう訳でもないけど、翔太はちゃんと謝ったし。それ
 に何より形だけの言葉じゃなくて、行動でも……。あそこまでするって事
 はそれはきっと本物の……本心だと思ったから。本当だって思えたから」

「だけど分からないの。どうしたらいいのか……。アクアの言った通り過
 去は消えないから信じられない気持ちと、もう過去の事だからもう一度、
 あの時のように戻りたいっていう気持ちが半々ずつあって、複雑で……」
「だけど、このままじゃ何も変わらないから……」


どちらにも振り切れない迷い。それを聞いた翔太は悔し気に顔を歪めると

自分にしか聞こえないような、自分でさえも消え入りそうな声で呟いた


「そう『変化』させたのは、やっぱり……」



あの日彩花が目の前から姿を消してからこの学校で再開する前、俺は

こいつと再開したことがある。それは本当にただの偶然で、一度目は

旅の途中で、二度目はここから遠く離れた土地にある集まりの中だった


(俺が知らない場所で一体どんなことがあったのだろう)


問いかけたい、知りたい。だが俺なんかが聞いていいはずがない


「……いや、なんでもない」

「……ねえ、暇なら手伝ってよ」

「え?」


声を返すと、彩花は無造作に出された備品に視線を促し一言


「備品の点検」



見慣れたバスケットボールから点数版など、数と状態を確認してい

くと次々と数は減っていき、無言に痺れを切らした翔太は口を開いた


「……知らないうちに、変わったなあ」

「?」

「昔は初対面のやつと話そうともしなかったのに、鈴木やクロスとかいつ
 の間にかさ。他にも色々いるだろ?昔からじゃ考えられないなと思って」

「あー、それは色々あって、まあ、あれ関係なんだけど。別に好きでそう
 なった訳じゃないというか。全くの偶然だったというか。特に沙織とかは」


やがて少女はぽつり、ぽつりと過去の話を始めた


「まあ変わったというか、今まで頑なに信じていた信条が変わり始めた
 のは、殆どが旅での出来事かな。その中で出会った人たちの苦悩を知
 って、意思を知って、勇気を見ているとなんだか不思議な感覚がして」

「……」


それはどれも想像とはかけ離れていて、一緒に悩んだり解決法を探した

り、時には意思の違いに衝突したこともあった。伝承や想像とは違ってい

てこれが本当の現実なんだと知った。それが何度もあった


「ま、翔太もあの時少しは思ったんじゃない?」

「あぁ、聞いた話では半信半疑だが、多分真実なんだろう。それが
 真実だとすれば、それがどんなものか俺には想像すらできないな」

「ま、私も最初はそうだったよ。当たり前のように見えていた裏に
 『そんなこと』があるなんて。夢でもなけりゃ信じられない話だしね」


そんな人たちの現実を見る度、乗り越えようとしている人達を見て思

った。このままじゃきっと駄目なんだ。私も立ち向かわないと……と


(もし出来るのなら、もう一度誰かを信じられるようになりたい。心の
 底から笑えるようになりたい。あの時、あの存在に言われたように)


『もう一度、君の笑顔が見たかった』




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次回

魔物の出没は東京内で騒ぎになり、多くの者が解明に動き出していた。

今日もミラクルレターの部屋で雑談しているとあることをきっかけに彩花

は過去の話をし始める。それを聞いたゆかりと六本木は……


NEXT、第15話、「その心が知りたくて」


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