INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

第36章、奏でし月光シンフォニー

シリウスを倒したことにより一同は行方不明になっていたファイター達を見

つけ出す。しかし未だ存在していたシリウスの気配を察知し急遽元の世界

に戻ることに。僅かな希望の中ユンヌの道標で『星楼の神殿』へと向かい、

最終決戦となるはずが僅かに届かぬ力に状況は絶望的で・・・
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「じきこの世界は変わる」


膝をつく者や多くが傷を負った者がいる中、宣告のように告げた

その声に感情はなく、まるで死の宣告をされたように突き刺さる


「おいカエル!何か弱点とかないのかよ!?」

『ずっとあの手この手を使ってるけど何も見つからない・・・!弱点がない
 なんて完全な存在・・・神様みたいだよ!正直言ってお手上げだ・・・』

「チッ、非常にマズいな」


立っている者も圧倒的な力の差にむやみに飛び込めなくなり、間合いを

取ったままじりじりと、ただ時間が過ぎるだけだ。時間が経てば経つ程、

ファイターから吸い取った力でシリウスは強さを増していく


「状況は不利になっていくばかり・・・絶望的ですね」

「なっ・・・このまま負けるだと!?ふざけるな!俺はまだ・・・!」



「あがけばあがくほど、苦しむだけだ。いくら足掻こうとも、それは無意味
 に過ぎない。大人しく運命を受け入れよ、そしてこの世界と共に散れ」


思考や想い、そこには揺るがぬ決意があったはず。だがそれを揺るがせる

程にシリウスの全てが勝っていた。本能が『危険』と信号を送っている

認めたくないが、大勢の中で『恐怖』が生まれ、それが行動を遮っていた



「・・・・・・」



不思議な感覚だった。明らかに状況は絶望的で、自分や仲間の命が失わ

れてもおかしくない。だけど何故かそこに恐怖はなく、彩花は戦意を失

い始めている一同に向かって言うべき言葉を探していた


「そんな、ことは……させない」


呟くと、聞こえたのかシリウスは振り向いた


「まだ……まだだ……っ!」

「!?」


再び対峙し剣を構えると一同は一点に注目した。誰もが顔を上げ、その

瞬間見えた少女の表情は未だ諦めの色を見せず、意思を示すものだった


『崩れ去れ!』


男が手を振りかざし銀色の光の柱が襲うと彩花は近づいてくる柱を見ると

近づき直撃する直前、フロルの力ではなく横へ飛び避けた事に一部は驚く

それはかつて彼女が戦いと無縁だったから、力を得ても、『絶対防御』

の魔法があったからこれまでの戦いをしてきた事を、知っていたからだ


彼女らは知っている。彼女が戦いが嫌いだという事を。正確に言えば血や

傷、死体を見るのが苦手だという事を。自分達が見慣れた光景に対し彼

女は拒否反応を起こした。それが彼女自身の心身を病ませたこともある


「あ、彩花!?」

『ここにいるのは選ばれたファイター
 (挑戦者)達だ!負けるはずがない!』


「……」


彼らは知っている。彼女が戦う事を望んでいることを。かつて悔しい思いを

したからこそ、力を得たいま当時の失態を埋めるかのように戦いに身を投

じた事を。そして、彼女は誰よりもここにいる者達の事を知り、だからこそ

誰一人失わまいとしている事を。普段は頼りないが、いざという時は想像

も出来ない、常識からかけ離れた思考と行動を起こすことを


突然の叫び声に顔を上げ、尚も彼女の言葉は続いた


「神に代わって私が選んだ・・・頼れる存在達だ!」

「!!」

「世界も考えも何もかもが違う。だけどそこには確かに同じ意志がある。
 例え遮る壁が高くても、手が届かない程遠くても・・・倒れても何度で
 も立ち上がる。挫けそうになってもこの人達がいるなら立ち上がれる」




「この世界を……皆を……好きにはさせない……!」


剣を再び強く握り直すと、脳裏と心に、溢れんばかりの想いが込み上げる。

膝をついていた、一同が見つめているとシリウスの手は少女に伸ばされ


「ならば、そのまま還るといい」

「……っ!」


彩花が駆け出すと、シリウスの手の動きに合わせて地面から銀色の柱が

立っていく。彩花の動きを追うように光の柱は続き、距離は縮まってゆく



「こいつでどうだ!」


その時、シリウスの視界の隅に何かが映ると、化身したスクリミルが鋭い

牙を向けて噛み付いた。振り払おうとしていると間髪入れず離れた瞬間

、魔法や遠距離の、他の者の攻撃がシリウスへ向かっていく


「!」


ふと振り向くと、そこには戦意を取り戻し立ち上がった一同の姿があった



「なんだか、アンタを見てるとアイツを思い出すねえ」



真っ先に声を発したのはテトラだった。少女は光景に唖然としていると

テトラは意味ありげにも笑みを浮かべ、少女に向かって言葉を紡いだ


「アンタのその『勇気』、まるで『勇者』だな」

「……本当に、見違えるようになってしまって。私達の方が励まされるなんて」


続いて次々と言葉を発する人たちの表情は意志あるものとなっていく


「いっちょまえに言ってくれるじゃねえか。だが、悪い気はしない」

「ファイター、か。改めて今ここにいる意味を思い出せた」


何度も攻撃が繰り返されていると、空中に浮かんでいたプリズムが変化

し始めていることに数人が、やがて全員が気づく。長期戦により足を踏み

外した途端攻撃がかすめると衝撃で数歩下がり、後方へ倒れこむと



「彩花、しっかり!」

「ティ、ティアマトさん……。……あれは……?」


彩花に続いてティアマトも見上げると、虹色に輝いていたプリズムが次第に

巨大化していく。そして最初の何倍もの大きさになった時、多面体は弾けこの

場にいた誰もをすり抜け空間全域に広がると思えば透明になっていき消えた


しかし消える間際、壁に触れた途端壁全体が不思議な光を放ち、それはプリ

ズムと同じ光を波打って発していた。それはどこからともなく発生すると壁を

伝い、この空間自体がプリズムの光に包まれたかのような光景だ


「プリズムが消えた……?」


辺りを見渡すとそれは幻想的で、巨大なオーロラが発生しているかの

ようだ。多くの者がこの世にあるものとは思えない感覚を感じていた

シリウスも驚いたように辺りを見渡していると、彩花はあることに気づく


「剣が……」


目の前に引き上げた剣が壁のように、同じくオーロラのような光を波打っ

ている。そしてそれは彼女だけの話ではなく、彼女の剣を見て驚いていた

ティアマトも端から光を感じ自分の斧を見ると同じような輝きを放つ


「これは・・・?」

『皆の想いが重なって、プリズムが共鳴した。これが、本来の力……?』

「え?」

『皆の心を……力を合わせて、そうすればシリウスを倒すことが出来る!』


それぞれの持つ武器に光が宿り、また、自身を武器とする者は自身

に何かが宿ったことを感じ取った。そんな中、リアーネは彼らに告げる


「~~!」

「あぁ。俺達も負けてられないな」

「ええ。二人とも、いいですか?」

「この声が枯れるまで……俺達も俺達の戦いをやり遂げて見せる……!」


三人の歌が再び聞こえると、それぞれが叫び声と共に立ち向かい、再び戦い

の音が鳴り始める。その様子をしばらく見ていた後、光り輝く剣を見て、その

眼差しは鋭いものとなる。そして、膝をつくと立ち上がり、儚くも強い意志で


「絶対、この世界を・・・・・・!」


顔を手で覆っていたシリウスが顔を上げると、視界には彼女が映り込む


「く・・・・・・うぅ・・・・・・!」

「お、おおおおぉぉおお!!」


ありったけの力を、負けるかという気持ちを出し切るように心身共に込めて

剣を振り上げる。その意思の大きさは、声に、表情に現れた。その時の表情

は見た誰もが『少女』とは呼ばないだろう。それは凛々しく、まるで・・・



「・・・・・・」


刃で斬り上げ、完全に持ち上がった時、シリウスは何かに打ちひしが

れるように震わせた。そして、その瞳はここではないどこかを見ていた




時の流れが緩やかになったかのように錯覚させる中、波を打っていた光

と重なり上に向けタられていた刃がキラリと輝いた。その光は冷え切り、

無残に傷つけられたこの場を優しく包み込むような温かさを秘めていた


「・・・・・・」


刃を引き抜き、数歩下がるとよろめいたシリウスから視線を逸らさずにいた

いずれ倒れるであろう姿を目に焼き付けていると、一瞬のうちに目が眩んだ







「・・・・・・ここ、は・・・・・・」


視界が元に戻った時、周りには共に戦っていたはずの人々の姿はなく、

そこは『無』に等しい真っ白な空間だった。ふと気づけば正面に人影が

見え、そこには傷一つ負っていないシリウスが立っていた


「見事・・・・・・と言っておこう」

「な・・・・・・」


あれだけの戦いの痕はなく、無傷だがその言葉にこれまでの禍々しさ

は感じられない。何かをしようという敵意もなく、想定外の言葉に驚きを

隠せず、同時に言葉に対する疑問が浮かび上がる。


「なんでこの世界を襲おうと、神たちを・・・ファイター達を閉じ込めようと
 したの。この世界を征服したかったから?手中に収めたかったから?」

「・・・私はもともと人間だった。だが知らぬ間に、私はこの世のものではな
 い・・・『未知なる存在』へとなっていた。だが、これは私の意思ではない」

「え?」

「心からこの世界を陥れるのは私の本心ではない。未知なる存在として目
 覚めた時、何かが私に囁いたのだ。それは何か大切な使命を与えられた
 気がした。それが何かは分からず、こうすることが使命のように感じた」

「な、どういう、こと……?」

「使命がなんなのか、未だにわからぬ。だが、我が身はもう、変わるこ
 とは出来ぬ。いや、私自身確信している。これで、正しかったのだと」


続けて彼は告げる


「天からの力を持つ特殊なお前なら分かるであろう?おそらくお前自
 身が、私の存在の意味と、こうして交えることになった、その理由を」

「……」



数秒間の空白が流れ、誰も何も発さないが、片手が胸の前に置かれると

彩花は目を閉じた。そしてさらに数秒後、唇を噛み締めると目を開いた


「これも、運命だと言うの」

「おそらくは」

「これも、世界が世界である為。私達が、存在するための、進化と退化
 を繰り返し、生き残る為の。歴史を・・・・・・繋げる為の定め・・・・・・」




「この戦いを持って、私は呪縛から解き放たれた気がする。そしてお前と
 交えて、これが私に与えらえた使命だと確信した。かつて生きた世界。
 特殊な思い入れはなくとも、それが使命だと言うのなら・・・全うしよう」

「なっ、それって……」

「共に相対する使命を持つ者、また交えることもあるだろう。その時は、また全力を持って挑むと良い。そなたらの力で・・・」






長い長い戦いは終わり、建物には光が差した。沖にいたラインバック達も

雲の隙間から光が差した光景に空を見上げていた。間もなく惑星にあった

無数のカプセルから、中に入っていた生物達の姿が消えていく



「・・・?」



それぞれのあるべき場所に現れたファイター達は、以前の記憶が曖昧な

事もあり、目覚めてから辺りを見渡す。だが、その場に異変はなく、ごくごく

普通の、当たり前そのものの光景が映っているのだった



負傷しながらも晴れやかな表情を見せた英雄達が沖に現れ、いち早く

気づいたイリアに続いてマロ、ラインバックは勢いよく彼らに駆け寄った


「…お前ら!やったのか!?」

「…私達の勝利です!」


めいっぱいの言葉に、言葉を吞み込んだ三人は笑みを浮かべ、大声を

上げた。続いて後方にいた何人もの英雄たちも、再度長き果てに勝利し

平和を取り戻したことを噛み締め笑みを浮かべた。そして



「さあ、帰ろう。私達のいるべき場所へ」



世界中に現れていたイグジステンス達はシリウスの消失と共に消え、彼

ら、彼女らの武功は瞬く間に知れた。そして戻ってきた者達を、誰もが

『英雄』と褒め称えた。目覚めているであろうファイター達の事と、終息を

迎えたことを祖国へ伝える為、それぞれは一度いるべき場に戻った


それから知るであろう神たちから何も通告がなかった事から、これは神

達も実は知っていたのではないかと仮定を立てる。だがあの驚きようから

、行方不明になったシリウスがそんなことになったとは思いもしなかっただ

ろう。この件についても、今回を機に神達の間に知れ渡るのかもしれない



「・・・脅威なる力、私はてっきり君の持つ剣・・・エターナルの事だと思って
 いた。だが君は力を解放することなくシリウスを制した。その正体は一体
 なんだったのだろうか。そして、シリウスとは一体何者だったのだろうか」

「そんなの簡単だよ」

「なに?」

「実力とか経験よりも、目に見えないけどだからこそ確かに、未知数の
 可能性を秘めるもの。私が、人生で一番信用出来なくて嫌いなもの」

「うん?一体なんだ?」




「それは……『絆の力』……かな」

「絆?」


部屋の一角、後日集まるであろう一同を待つため、少女はテリウス大陸に

留まっていた。少なからず被害もあった為、その手伝いも兼ねて残っていた


「目に見えないし信用できないけど、何かを信じる心は何よりも勝る力にな
 る。皆が同じ思いだったから、シリウスにも勝る力になったんじゃないかな」

「それは・・・そうかもしれんな」

「どんなに優秀な力でも、互いが自分勝手でバラバラに動いたらそれは個々
 の力でしかない。強い所、弱い所を補って互いを認め、尊敬してこそ・・・
 本当の力は発揮される。そしてそれは、誰にも予測できない結果になる」

「・・・君からそんな話が出るとはな」

「ふん。私だって……」


途中まで言いかけるものの、その先が話されることはなく、


「どうしたのだ?」

「な、なんでもない!」


視線を逸らすとそう跳ね返すが、不満そうに少女は告げた


「実際それが生み出した結果を見ても、信じるなって方が無理だよ。悔し
 いけど、心の底から信じた時、それは努力や才能では出せない力になる」

「同盟での協力や兵の策略としての同調はあるが、絆・・・か」






「この戦いでも、色んな事がありましたね」

「そうだね」


エリンシアの言葉に彩花は頷いた

「時には貴方の事に衝突したこともありましたが。それは変えられない
 、もう起きてしまった事ですのね。ですが、これだけは覚えていてくださ
 い。あの時も今も、貴方や仲間、この国に対する思いは変わりません」


懐かしい。初めて彼女と会った時のことを。マーシャと共に城へ戻った

時、城門の前で怯えながら挙動不審にしていたことを。あれから、私達

と、彼女の間ではあまりにも多くの事があったように思えます


「正直、知りたくなかった事もある。けど知ってしまったから、それは運命
 として受け入れるしかない。その過去は、決して変えられないものだから」

「……そうですね。今も起こりうることに迷いがないと言えばうそになります
 。ですが、運命は、いつかは乗り越えられなければいけないのでしょう。
 それはとても辛く、痛いものです。だけど、止まるわけにはいきません」



いつか……。人はその『いつか』の為に、生きているのだから



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次回

しばらくの時を経て英雄たちはテリウスに集まっていた。今回を祝しての

パーティーが開かれたのだが、セネリオは相棒である人物の安否を気に

していた。だが、それは一つの真相へのきっかけとなるのだった


次回 第37章、「追憶の欠片」

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