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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

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第9話、兄弟対決

家に戻って来た彩花が目撃したのは見た事のない啓の姿だった。今回

の件から彼は自らの過去を話し始める。それは今とはかけ離れた姿、そ

して語られるは北条啓と彩花の父、神月博の出会いのエピソードだった

。全てを聞いたとき、彩花は啓にある提案を持ちかけるのだった……
_________________________________
「私は…貴方のお蔭でここまで来られたのです。そして、もっと上
 を目指したいと思えるようになりました。ありがとうございます」

「……そのことなんだけど、もし君が望むなら、今からでも構わないよ?」

「え?」


あの時のように、博の告げた言葉に驚いた

「君はつまり、兄さんのように上のランクを目指したいわけだろう?上位は
 日本じゃ学べる場がないと聞いたことがあるよ。まあ日本は他国より治安
 はいいし、今のままでも十分構わないが、今からでも挑戦したらどうだい?」

「え?」

「挑戦しよう、と思った時がやり時だよ。もう数年遅れたって、そんなには
 変わらないさ。家の方にはそう伝えておくし、君が望むなら手配もしよう」


彼の厚意により、本来春から日本に渡るはずだった啓は卒業から更に

三年間イギリスに残り、更なる勉学に励んだ。やがてAランクに昇格し、

やがて日本へ渡り、北条啓は神月家の執事として仕えることとなった


「これが、私がここにいる理由です」

「そんな事が……」

「貴方のお父様にはどれだけ尽くしても返せぬ恩があります。仕えてか
 らも色々と気にかけて下さり、私や他の者たちによ良くして頂きました」

「……」


次の瞬間、音がして顔を上げると立ち上がった彩花の姿があった


「自分が決めたことを他人がどうこう言う事じゃないよ。自分なら、
 そこまで言われて頭にこないわけがない。私なら殴ってる……!」

「ぇ……」

「君の事は分かった。お兄さんとのことも。だけどね、今資格があるか
 どうかはお兄さんが決めることじゃない。神月家が決めることだよ」


そして、彼女は告げる


「いや、今は……私が決めることだよ」

「!」

「そこまでして努力して掴んだものなら簡単に手放していい訳な
 いだろ?好き放題言われて……私なら無理やり認めさせるね」

「……」


強い言葉に唖然とするも、数秒後北条啓は立ち上がった。強い意思を

感じさせる彼女の強い目を見ていると、やがてあるものを宿すのだった



「……ふぅん」



ホテルの一室、手紙を懐にしまうと男性はどこかへと歩き出した。それ

から僅かな時の流れの後、ある場に啓と彼の兄、北条玲は対峙していた


「宣戦布告とは、大したものだな」

「私にも誇りがあります。だから兄さん、私と勝負して下さい」

「……いいだろう」


そう告げると懐に手を忍ばせ、玲はあるものを取り出した。ぱっと見短

い棒に見えたが、振動を与えると先端から瞬く間に伸び鞭となった


「審判は、公平に私が務めさせて頂きます。勝敗が決したと判断した
 ら止めますので。命に関わると思った場合も止めますのでご了承を」


下の階からそんなやりとりを無言で見つめていた彩花は隣に話しかけた


「あの、ありがとう」

「突然けしかけてきたと思えば以前決闘した広場を貸せなどと……。
 見たところ兄弟喧嘩ですの?にしてはお互い物騒な物腰ですわね」

「はは……そんな所かな」

「外で大事になれば一大事、そこそこの耐久があり人目にもつか
 ない場……。それにここを選定したのは正しい判断ですわね」


髪をかきあげると納言麗奈が告げる


「折角ですから私も見物させて頂きますわ」

「……」

「Aランク同士の戦い、というのにも興味がありますの」


そう告げると彼女は彩花が向いた方向に向き直ると眉を顰(ひそ)めた


「一度も勝てた事がないというのに、よく宣戦布告など出来たものだ」

「……えぇ。私が貴方に勝てたことは一度もありません。遊びでも、それ
 以外でも。それでも、これだけは何があっても譲ることはできません」

「……」

「今の私は一家に仕える執事。負ける訳にはいかないのです……!」


そう言い駆け出すと玲は握られた鞭を前方へ振った。離れた場まで伸びる

ものの何度目かの動きに距離を掴んだ啓はそれを避け距離を詰めていく


「!」


一気に距離が縮まると蹴り上げるが、相手は瞬時に姿勢を低くしそれを避

ける。その後も間髪入れず蹴りを続けて繰り出すが見事にそれは当たらない


(あの時も思ったけど……)

「凄い……」


無意識に呟いた。普段は身なりはともかく、どこにでもいる人間に見える。

掃除して、料理して、だが今は俊敏な動きにあの人が普通でないことを

再び思い知らされた。その動きは格闘家のようで、ゲームやアニメのキャ

ラクターのようにバク転を難なくこなしまるで超人みたいた。


「これが……Aランクの戦い……」


隣で同じく驚きながら呟いた納言麗奈に続き彩花は口を開く


「どこかの武道大会みたい」

「両者とも、流石、といった身のこなしですわね」

「どっちも意味不明だけど……相手の方、動きに隙がない」


互いの攻撃に対しほとんどが不発。どちらも相手の攻撃を避けている

のだ。あちこち動き回る姿に目が追い付かない。有利不利もなく、ただ

目の前で繰り広げられる光景を呆然と眺めていた


「……」


無意識に彩花は手すりを強く握っていた


「っ!」


動き回っていた中、目を細め動きを追うと鞭を放つ。先端が辿り着く瞬間、

動いていた啓の姿が止まり鞭は片足に絡みついた。その時彩花は反応

するが玲が鞭を引っ張るとその反動で啓は地へ倒れこんだ


「確かに、俺が知る頃とは大違いのようだ。あれだけ鈍かった身体も、
 見違えるほど『形』にはなっている。だが、それはあくまで最低条件だ」

「……っ」

「Aランクいなったからと同じだと思うな。俺にお前は勝てはしない」

「「……」」

「いや、勝たせない」

「……」

「身をもって思い知れ。俺とお前は天と地の差があるということを。己
 がいかに甘い考えを持っているか、そのあまりの未熟さを知るといい」


一気に持ち手を引っ張ると引き寄せられた系の腹に拳がめり込み


「が、はっ……」


よろけたのも束の間、すかさず次なる一撃が啓を襲い、鞭が振り払わ

れると痛々しい音が響いた。衣服で覆われている為目視は出来ない

が痣が出来るであろう強さで、それは一瞬ではなくじわりじわりと継

続的に身体に苦痛を齎していき、目をそらしたくなる状況だった



「!!」


驚きざまに手すりから身体を乗り出すが、映し出される光景は防御フィ

ルター越しの為薄く壁が見え、はっきりとその向こうの光景は見えない

だが思わしくない状況は明らかで、振り向いた納言麗奈が告げる


「開始から約40分。貴方の執事は息も切れてきてるし動きも鈍ってきて
 る。ここから状況が大きく開きそうですわね。……ウィルトラベルク家に
 仕える執事……、ウィルトラベルく家はイギリスでも屈指の大富豪……」

「……」

「そこに集められる使用人や料理人も一流ばかりと聞きますわ」



身体が悲鳴を上げる。それはあの日以来の、久しぶりの感覚だ。兄が

卒業してから、一年以上それまで日常のように感じていた感覚を体験

することはなかった。動きたくとも動かない。あの時とは違う確かな意識

があるのに、脳の命令に対して身体が答えてくれない


「……」


そんな中、動かぬ啓を前に玲は亀裂の入った自らの服を見る


「昔は手さえ届かなかったというのに、服にキズをつけるとは」

「今の私には捧げるべき場があります。人がいます。執事としての意味
 を見出し、教えてくれた方が。その人の為にも、まだ諦める訳には……」

「だが、ここまでのようだ」


それから間もなく、瞬間的に起きた現象に思わず


「えっ……?」

「俺の勝ちだ」


言葉を発した次の瞬間、目お前に兄の姿が迫っていた。駆け出したとし

ても数秒の猶予はあったはずなのに、そんな間を感じることなくそれは

起きた。そして気づいた時、視界に端に黒い物体が一瞬映っただけだった



「がっ……!」


脳に衝撃が走ると視界は一瞬のうちに横転した。脳内の信号が全て止ま

り端的に感じた痛みの後、視界は定まらず鈍く深い痛みが蠢いていた


「啓!?」

「諦めろ。啓、お前の負けだ」

「ま、だ……」


声を発しようとするが痛みと脳が回らず鈍った感覚で途切れ途切れにし

か言葉が出ない。言いたいことは決まっているのにそれが言葉に出ない


「まだ……」


身体に命令を叩きこみ無理やり起き上がるものの、ダメージが緩和され

ていない状態で膝を落とすと前方に倒れこむ。腕に力を入れ上体を起こ

すと見下すような視線を向ける兄の向こうに彼女の姿が目に入った



意識が遠くなる。鞭を打たねば意識がどこかへ行きそうだ。だが視界に

映る姿にかろうじて意識は途切れそうなほど細い糸で繋がれていた


「……っ……」

「……」


神妙な表情で顔を歪めていた彼女が映り


(流石に、ここまで無様な姿には呆れられた……か)


「大人しく辞退しろ」


その声は啓の耳には届いていない。意識は自らの脳内だけに向き


(あれだけの努力をして、それでも……兄さんには叶わないのか……)


秀才と呼ばれた兄と素質を持たぬと言われた自分。博様に出会った

あの日から、意識が変わり出来る限りの努力はした。苦手だったお茶

淹れを克服し、作法や言葉のあれこれを猛勉強して


試験に合格したときは嬉しかった。もちろん、そこで終わるわけはなく

その後もありとあらゆる知識を学び、いつしか優秀だと言われた


当初は執事になれるかもわからないと言われていた。しかし卒業試験

に合格し、神月家に仕えることになり、彼の厚意によって更に勉強に

身を入れられることになり、あの人の家の役に立ちたいという思いで

ついに夢のAランクへ上り詰めたのを覚えている


「……」


呆然としていた彩花の方を向くと、北条玲は口を開く


「お騒がせ致しました。この者は貴方様の所にいるには面汚し
 にしかなりません。よって啓は私がイギリスへ連れ帰ります」

「……!」

「ご安心ください。今後貴方の家名に傷をつけることはないでしょう。
 もっと相応しく優秀な者をお雇いください。なんなら、迷惑をおかけし
 たお詫びとしてこちらから家名に恥じぬ優秀な執事を手配致します」


勝敗がどうなるかは想像できなかった。以前ここで啓と納言麗奈の

執事が戦った時は、驚くまでの圧勝だったにも関わらず、今回全く

歯が経たず、誰がどうみても『惨敗』の結果となっただろう



「……」


彼の言葉に対し呑み込むように俯くが、やがて彩花は意思を固めた


「え……?」


次の瞬間、隣から姿が消え彼らの前に現した姿に納言麗奈は声を漏らし

た。北条玲の前に現れると何も告げることはなく、腰から引き抜いた木刀

を握ると啓を遮るように立ちはだかった。そして彼女はこう告げる


「無理矢理連れていくと言うのなら、私を倒してからにしてください」

「な……」

「……」


納言麗奈が驚きの声を上げると玲も想定外の言葉に驚いていた

そして声を聞き意識が戻りかけた啓は起き上がり彼女を見上げた


「な……お嬢様、それは……」

「私が勝ったらこのまま帰ってください」


啓の言葉に返すことなく、彩花は玲に向かって淡々と告げた。一度

は驚きを見せた玲だったが深いため息をつく。それに対し変わらぬ表

情で少女は告げる。それは無表情に近く、楽観的に見えぬ口調で


「……はぁ」

「……言っておきますけど、冗談じゃありませんよ」

「なっ、神月さん!?貴方何を言っていますの!?」


壁越しに納言麗奈の叫び声が聞こえた


「素人があらゆる訓練を積んだ執事に敵う訳ないでしょう!彼と貴方
 の執事、今のやりとりを見ていれば馬鹿でもない限りわかるはず!」

「戦い『だけ』なら、負ける気はありません。少なくとも、ここにいる誰にも」



尖った言葉に対し、玲は答えることなく言葉を発した


「……どこまで惨めな姿を晒すのか……」

「……?」

「よりにもよって、仕えるべき人に『守られる』とは……」

「なっ」


再び深いため息をつくと呆れたように彼は告げる


「執事は『主を守る者』であり『主に守られる者』ではない。そんなこ
 とはどんな時であれあってはならない。今までで一番、失望したよ」

「っ!?」

「執事として、基本以前の常識すら捨てたとは」


彼の言葉に彩花は動揺が隠せなかった。それは彼の言葉が鋭く

突き刺さったからだ。啓を守る為に、啓の為にと思って取った行動

が、彼の言葉によって逆に貶める行為になってしまったからだ


「な、私は別にそんなつもりじゃ……」

「なんて情けない。素質とか、それ以前の問題だ」

「違う……!」

「……」



そして、記憶は過去に遡る。それはまだ、東京へ来る前の話だった

屋敷の部屋の一室、神月博に向き合うように啓は話を聞いていた


「実は、君に頼みたいことがあってね」

「頼みたいこと……?」


まだ神月家に来てから一年も経っていない頃、もっと前、ここへ来た

ばかりの頃の話だった。そんな中、呼び出された啓は困惑していた


「君に頼みたいことっていうのはね。今はここで働いてもらうつもりなんだ
 けど、いずれはある人の所に行って、その人の世話をしてほしいんだ」

「ある人……ですか?」

「うん。というのも私の娘なんだけどね」

「!」




「実は来年の春に、東京の学校に行かないか提案する予定でね。もし行
 くことになったら君もそこに行って欲しいんだ。ほら、都会だし、田舎
 同然の所で育った身としては色々不慣れや不安な事が多いだろうし」

「はい」

「なにせ一人暮らしになるだろうから危険も尚更多い。……本音を言うと
 単に私が不安なだけなんだけどね。本当は私が一緒にいられればいい
 んだけど、なかなか難しくてね……今も一時的にここに来てるだけだし」


しかし啓は告げる。ここには他にも使用人がいるから身の回りの世話や

護衛は新人の自分ではなくもっと優秀で慣れた者に任せた方がいいの

ではないかと。そんな重要なこと、自分に任せていいのか……と


「私に務まるか……」

「うーん。確かに務まるかなぁ……」

「……」

「あ、違うんだ。私が言った不安は啓君じゃなくて娘の方なんだ」


そう告げると唸るように


「娘はちょっと変わってるというか普通じゃないというか……。まあ、
 原因があるんだけどね。詳しい話は娘の返答を聞いてから話すよ」


=====================================

次回

数年前、神月家の屋敷にやってきた啓は神月博にあることを言われる。

やがてその時が近づき、再度呼ばれた彼はある話を聞くのだった。遠く

遠く伸ばした手で掴んだ先で、北条啓は一つの『答え』を出す


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