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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

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第8話、紡ぎし琥珀

秋祭りを終えた数日後、彩花のクラスは文化祭で喫茶店を開くことに

決まる。そんなある日外国の大富豪に仕えているという啓の兄が日本

に来ることを知る。想像とは裏腹な表情に彩花は疑問を感じていた
_____________________________
「給仕とは主人の身の周りの世話をし、補助をする。どの場に出
 ても恥じることのない様、常にサポートし、気を抜く時などない」

啓に向けられた目や口調は、厳しいものだった


「だが今のお前はなんだ。主人の意向だろうが、身分相応、必要最
 低限の常識というものがある。流れに流され、いずれ失敗してか
 らでは遅い。書かれたことだけをするのはアマチュアでも出来る」

「そ、それは……その通りですね」

「先を見据え、臨機応変に行動する。そんな当たり前の事すら気
 づけないとはまだまだだ。気になる点を挙げればキリがない」


冷たく、鋭利に投げかけられた言葉は胸の奥底を突き刺すかのご

とく突き立てられた。啓にいつもの余裕さはなく、さらに彼は告げる


「お前はすぐ感情が表情に出る。俺の言葉は執事たるものなら、従者
 なら出来て当然のことだ。やはりお前は、執事には向いていないな」

「……」

「代々有名な北条家の一人として、ただの面汚しでしかない」

「……っ」

「日本、いや世界有数の名家についたと聞き耳を疑った。一時は見直し
 もしたが……俺の見当違いだったようだ。取り返しのつかぬ事をする
 前に、この家を去るといい。この家の為にも、執事はやめるんだな」


一方的にそう伝えると、それ以上何もいう事なく彼は鞄を手にし扉を

抜けると家の外へと出ていった。一人部屋に残っていた啓は、どこ

にもやるせない感情に俯き、椅子の背を強く握っていた


「……」


帰ったとき、久しぶりに会ってどうだったか聞こうと思っていた。どんな

思い出話に花を咲かせたりとか、どんな事を話したのか、次々と沸き上

がる問いに返ってくる言葉を予想しては楽しみにしながら。しかし帰って

来たとき、その望みはガラスのように砕け散った


「……」


いつもなら別行動をしていたとき、帰ったら扉を開けた瞬間彼は玄関

にやってきて出迎えた。そしていつも変わらず『おかえりなさい』という

だが扉を開けても彼の姿は見えず、その時点で不穏な気配はしていた



ふと廊下からリビングを覗けば、食器を磨いているものの明らかに表情

が暗い。やはり良くなかった事が起きたのか、そんな考えが頭をよぎる

もののあんな表情はこれまで見たことがなく、その衝撃に聞くに聞けない



(絶対おかしい。一体何が・・・)


次の瞬間、パリンと何かが割れる音がした。驚いたように再び覗き込む

とどうやら手を滑らせて持っていた食器を落としてしまったようだ。普段

の行動からは考えられない失態に目が離せないでいると、落とした本人

も驚いたように割れた皿を拾おうとしゃがみ込んだ


「……つっ……!」

「啓!?」


手を伸ばしたかと思えば少し触れて引っ込めた動作に思わず飛び出ると

、驚いたように振り返った。引っ込めた手の先は切れた場から血が見え


「帰っていらしたのですね」

「っていうか手……!」

「皿を割ってしまって、危ないので少し離れてください。今すぐ片付け…」

「それより手が先!水で洗ってこっち来て!」


水を出し強引に手を引っ張ると水にさらし、ソファまで引っ張っていく


「こういうのは箒で掃けばいいの。今箒とちり取りを持ってくるから。
 手を切るなんていつもの啓らしくない。まさかドジっ子系だったの?」

「……」


つらつらと言葉が出るも帰ってくる言葉はない。いつもなら受け流すか

苦笑いしながら言論するか、知らぬ言葉なら意味を尋ねる。いつもと違

う様子に、まるで別人を相手にしているようでこちらもどこか調子が狂う


「申し訳ございません。ついうっかりしていて」



その後持ってきた箒で片付けると少女は遠慮がちに尋ねた


「……お兄さんと何かあったの?」

「……!」


思い切って尋ねると、一瞬は驚いたように反応するも、彼はこう告げる


「やはり私は感情が表情に出やすい、ですか」

「まあ、妙に暗いというか、ここじゃないどこかを見てる感じというか」

「……」



「申し訳ございません。私には、貴方の執事は務まらないようです」

「……えっ?」


次に発せられた言葉に、ただ驚きの言葉を述べるしかできなかっ

た。やがて言葉の意味を一言一句理解すると次に浮かぶのは焦り


「ど、どういうこと?」

「……」

「こんな性格も口も悪い人間の所にはいたくないってこと?それとも」

「ち、違うのです」


思い当たる節がありすぎる。心当たりを発していくと驚いたように否定する


「お嬢様は何も悪くないのです。お嬢様は、何も……」


だんだん言葉の力は弱まり、語尾はほとんど消えかけていた。そんな

言葉に彩花は、この短時間に何があったのか、全く想像できなかった


「私には、神月家に仕える資格はない。と言われました」

「言われたって誰に……」


途中まで言いかけるものの、その途中で思い当たるようにハッとする


「まさか……お兄さんに……?」

「……」


数秒間の沈黙が流れ、何かを覚悟したかのように啓はぽつり、ぽ

つりと兄の事、そして自分の事を語り出した。彩花もソファに座り


「……私の家系は、何代も続く給仕の名家で、祖父や祖母、父
 や母も世界で名を馳せる名家に仕えてきたと聞いています」


そして兄や私も、生まれた時からその道は決まっていました。兄はと

ても優秀で、難関のテストでもよく満点でした。そして彼はこう告げる


「今ではAランクではありますが、お恥ずかしながら……昔の私は
 『落ちこぼれ』と呼ばれるほどこの道に対し才能がなかったのです」


私は養成学校に入る前より両親から手ほどきを受けていましたが、入学

試験も合格ギリギリで入学は出来たものの筆記試験では赤点、実技も

まるで駄目となんの取り柄もなく、兄なら八歳で出来たことが自分は十に

なっても出来なかったことが数えきれない程ありました


「給仕界では北条家はそこそこ有名で、様々な人から期待外れと
 言われ、優秀な兄と事あるごとに両親や教師から比べられました」

「……」

「『玲が貴方くらいの時はこんなことができたのよ』とか『玲も出来たから
 貴方もできるはず』と。しかし、一定期間実際に仕え経験する実習を前
 になっても私の才能や周りの評価は変わることはありませんでした」

『一家の恥さらし』や『お前には才能がない』とまで言われ、一足先に兄は

卒業し世界的有名な家系に仕えることが決まった。こんな状態では卒業

するどころか執事になることすら危ういと言われていました


「……嘘」

「紛れもなき真実です」


しばらく話を聞いていた彩花だったが、彼から聞かされた真実は信じら

れるものじゃなかった。それはあまりにも衝撃的で、今の姿からは全く

想像できない。きっと誰も想像出来るわけない


「始めは兄も一緒に練習に練習に付き合ってくれたり、私に教えてくれ
 たのですが、兄自身忙しくなったりしてやがて共に過ごす時間は少な
 くなりました。そして……やがて、ある日兄は私にこう言ったのです」

「……」

「『お前に執事才能はない。ただの一家の恥さらしだ』……と」


私自身才能のなさは分かっていました。努力してもなんの成果も得ら

れない、きっと自分に執事は無理だと。この道を諦めかけていました


「……」


やがて、数秒沈黙していた彼が次に発した言葉に反応する


「そんな時です。あの人が現れたのは」


何かを思い返すように、遠い日を見つめる彼はそう告げた


「あの人?」

「覚えていますか?私がお仕えする場は一つしかないと言ったことを」

「え?……確か、納言麗奈との時……」

「貴女に話すべきですね。私と、あの人との出会いを」


それはあの時の言葉の真意、そして自分の人生を大きく変えた出来事

「まだ私がイギリスの給仕学校にいた頃、私は退学するかしないかの
 瀬戸際にいました。そんなある日、貴女のお父様が現れたのです」

「えっ?お父さんが?」


突然の父の言葉に驚くものの彼は言葉を続けた。国内で行われた

研究発表会に参加する為にイギリスを訪れ、その時訪れたという

感傷に浸るように、当時の事を思い出しながら彼は語り始めた


「今でも忘れません。あの時の事は……」







『何をしているんだい?』


それは遡ること何年も前の話。沈むように噴水の前に座り込んでいた

時、聞こえた声に少年は顔を上げた。そこにはスーツ姿の中年に近い

男性の姿があった。スーツの上にコートを羽織っておりこの学校の者

ではないことは明らかだった為、少年は疑問を抱いていた


「おっと、突然話しかけて悪いね。私は生物の習性や生態について研究
 していてね、今日は近くで行われた研究発表会に参加していたんだ」

「研究者?そんな人が何故ここに……?」

「ちょっと遊びに来ただけさ。観光……とでも言っておこうかな」


にこやかに告げた彼は座っていいか尋ねると少年は迷ったタ挙句頷い
 
た。隣に座った男性は見たところこの国の人ではなく、日本人である自分

とよく似ている。言語から彼は日本人で、自分が日本人だと気づいたのだ


「沈んだ様子でどうしたんだい少年?」

「え?僕は別に……」

「若者は元気が一番!勿論、君くらいの少年ともあれば尚更……ね」

「……」


穏やかな雰囲気を感じた彼は続けて尋ねる


「何か悩みならおじさんが聞こうか?友達と喧嘩でもしたかい?
 それとも嫌なことでもあったかい?なんでも話してみるといいさ」

「でも……」

「ははは、日本人に会ってついつい嬉しくなってしまったよ」


男性はそういうと笑った。初対面だというのに友好的なその人は黙って

いた少年に変わって様々な事を話した。たわいもないこの国の街並み、

日本に残っている家族の事など。次々と尽きることなく彼は話していく


「君、名前は?」

「北条啓って言います」

「大人な私は色々なことを知っているから何か力になれるかもしれないよ?」

「……実は」


話を聞いているうちに打ち解け、少年はそれを話し始めた


「似様は何でも出来るのに僕は全然ダメで、このままじゃ執事になれ
 ないかもしれないんです。出来て当たり前の事すらできなくて……」

「うんうん」

「卒業試験に合格しなきゃいけないのに試験は難しいものもあって……
 簡単な実技すら出来なくて。僕、執事の才能がないんじゃないかって」


何度も頷き、少年が話し終えた後彼は告げる


「そうかそうか。それは大変だね」

「どうせ僕は落ちこぼれなんだ。兄様や父様母様のように立派な給仕係
 は出来なくて、いつも失敗して……。兄様はすぐ卒業したのに僕は……」

「へえ、両親もそうだったのかい?」

「うん。僕の家は、代々給仕として多くの名家に仕えて来た家系で、僕
 や兄様も同じように名家に仕えなきゃいけないのに…っ…。うっ、うう」


悔しさと悲しみに俯くと少年の目から大粒の涙が溢れ出した。そんな少

年の背中をさすると、前方を見つめながら男性はぽつりと話し始めた


「君は君さ、時間の許す限り、出来ることをすればいい」

「……」

「君は執事になりたくないのかい?」

「そういうわけじゃなくて。僕も、父様達のように立派な執事になりたい」

「なら焦る必要はないさ、成長なんて、人それぞれだしね。君ほどの子供と
 いう事は、君も飛び級で来たんだろう?君なりのやり方で、お兄さんと同
 じじゃなくてもいいんじゃないかな。焦ってもいいことなんて起きないさ」

「……」

「研究だって何年やっても進歩しない時なんてザラにあるしね。でも叶えた
 い夢の為、研究者達は無駄になるかもしれない時間を使って励むんだ」

「え……?」

「私だってそうさ。賞与されるときもあればなんの成果もない年もある。物事
 には流れがあって、案外運だって重要な要素さ。焦って思わぬ事故を起こ
 しても仕方ないだろう?死んでは夢もなにもなくなってしまうわけだしね」


誰もが皆同じじゃない。すぐに結果を出す人もいれば違う人もいる。だが

例え望む結果が出なくてもそれを続けられるかどうかは才能ではなく、あ

ることにかかっている。少年は、次の言葉に目を大きく開けた


「それは自分がそれを成し遂げたいか、だ」

「……!」


驚く少年に対し、男性は朗らかな笑みを浮かべると少年に告げた


「君がそう思うのなら、もう少し頑張るのも手だと思うよ。一年後、君が卒
 業する時になったらまた来るよ。もし行く先がなければ……うちにおいで」

「え?」

「ははは、実は今日は研修生の書類を取りに来たんだ。郵送して貰
 えるけど折角近くまで来たからね、どうせならって取りに来たんだ」


そう笑いながら言うと男性は立ち上がり校舎の方へ歩き出した。呆然と見つ

めていた少年は我に返ると次第に遠くなる男性に向かって叫び呼び止めた


「あ、あの!貴方は……貴方の名前を教えてください!」

「ん?私かい?神月博だよ」

「あの、聞いてくれて、ありがとうございます!」

「相談に乗るのは大人の役目さ。……頑張れよ、少年」

「……」

そう言い残すと男性は建物内へ消えていった。これまでずっと比べら

れ、誰からも必要とされなかった中彼の言葉は衝撃的なものだった。

その時の出来事が、その人の言葉が忘れられず消えかけた夢に火を

つけた。それから少年はあくる日も練習や勉強に励み、取り組む心境

にも変化が訪れた。それは、彼以外誰も知らない


(あの人の為に……)


家族の為、家名の為に執事になるのが当然と思っていた。だがあの日

から少年の意思は自分に励ましの言葉をくれた彼に向かっていく。それ

は日を重ねるごとに明確なものとなり、やがて月日は流れていく


努力の結果、いつしか落ちこぼれという称号は消え去り、急成長を遂げた



「君に話というのは、是非うちに来てほしいと言っている所があるんだ」

「え?」

「日本にある一家で、この家はよく実習生を受け入れてくれてな、これまで
 も何人かの生徒がお世話になってるんだ。まあ、色々と特殊なのだが……」


歯切れ悪く告げると、机にあったある書類を取り出して教諭は話し出す


「表立った名声はないのだが、知る人知る世界的にも有名な名家でな。
 歴代医者や博士、音楽家など、なんらかの形で名を上げているんだ」

「はい」

「こんな所から声がかかるのはこれまでなかった。名指し自体、何
 かの縁でもないと在り得ない話だ。決して悪くない誘いだと思うぞ」

「……」


少年が考え込むとさらに男性は言葉を続けた


「他にも君を呼ぶ声は多数あるが……強い希望があれば仕方ない
 が。まあ、これも君の努力の結果だ。しっかり考えて決めるといい」



それからさらに時は流れ……


「卒業試験に合格したようだね」

「!」


青年が建物から出た時、聞こえた声と同時に目の前にある姿が映った。

それは一年前、あの時と変わらぬコートに身を包んだ男性の姿だった


「貴方は……!」

「おめでとう。少年」


あの時と変わらず、穏やかに告げた彼に対して少年は会釈をした


「ありがとうございます」

「おやおや、心身ともに、成長したって感じだねえ」

「貴方のお蔭です。……でも、結局兄さんが二年年で卒業したにも
 関わらず、私は三年かかってしまいました。Cランクのまま……」


彼は話す。学校は三年制で、最低でも二年は通わなければならない。卒業

までの必須資格は研修を完遂することと、卒業試験に合格すること。本来は

三年目に研修があるのだが、認められた者は飛び級で二年目に上級生と共

に受けることが出来る。兄はそれで二年で卒業したのだ


兄は卒業試験の合格と同時にAランクへの昇格試験も合格した。兄の功績

は北条家にとっても、学校にとっても鼻高いものだった。その話をすると


「はっはっは、留年しなかっただけいいじゃないか!」

「……!」

「周りに年上が多い中、君はそれを成し遂げたんだろう?なら十分じゃ
 ないか。それ以上のことは、これから成し遂げればいいじゃないか」


あの時と同じだ。彼の言葉は温かい。そして、二人はあの時と同じように

噴水の前に座った。そこに座っているだけであの時の事を思い出す


「後は卒業を待つだけか。君がうちに来てくれると聞いた時は嬉しかったよ」

「あ、あの」

「ん?」

「あの時の言葉……本当だったんですね」


あの時より、少し成長した少年は遠慮がちに呟いた


「あれは、ただ僕を励ます為に言ったんだと思って……」

「あぁ、あれか」


この世界の常識で言うならば、コネでもない限りこんなことはあり得ない

厳しい世界だからこそ、誰もが少しでもいい場所に仕えようとする。少年

の身に起きたことは、誰が聞いても信じられない奇跡のようなものだった


「うちは実力だけじゃあんまり人を選ばないからね。大半の家は実力や成
 績で判断しがちだけどね。確かに成績は一番分かりやすい判断基準だけ
 ど、私は正直必要以上の実力は後からついてくるものだと思っているよ」

「……」

「知識や能力なんて、後からいくらでもどうにでもなる。そう、君のようにね」


私個人、一番必要なのは心や意識だと思うんだ。そこで頑張れるか、それ

を続けられるか。そしてその道について、どんな意思を持っているか。知識

や能力は必要最低限あれば、それ以上は求めないという


=================================

次回

啓から過去の話を聞いた彩花は彼に一つの提案を持ち掛ける。それは

自らの力で兄を認めさせること。提案に乗った啓は日本に滞在している

北条玲に宣戦布告の手紙を送り、兄弟対決が始まろうとしていた……


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