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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログです

第3話、風に舞う種

桜丘高校の代表として彩花と霧島亜理沙は紫音の通う芸能学校に5日間通う事

になった。乗り気でなかった彩花だったが想像を遥かに超えるハードな授業が

待ち受けていた。そして夏祭りの歌を聞いていた紫音から作曲を頼まれ・・・
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「許可は貰ったわ。先生は驚いていたけれど」

「・・・出来るかどうかわからないよ?別の人にも頼んだ方が・・・」

「時間もあまりにも少なすぎる。普通なら無理な事は承知していますわ」

「まあ・・・やれるだけはやってみるけど・・・」



とはいえ他人の為の作曲なんてした事がない。歌手の歌う曲はどうやって作る

のだろう。考えても作曲科と知り合いでもない彩花にとって答えなどわかるは

ずもなくこのままでは本当に紫音が試験に落ちてしまう



(作曲科の人に訊けばヒントが得られるのかもしれないけど・・・)



知り合いですら抵抗があるというのに見ず知らずの人に話しかけられるはずが

ない。頼まれごとの為とは言えどこのハードルは自分にとって並大抵のものでは

ない。難しそうな表情をしている彩花を見て紫音はもう一度心の中で強く頼んだ


「軸がブレてる!」

「はいっ!」



テレビで当たり前に見ていた風景が実際するとなると信じられないくらいに出

来ない。回るカメラの中一瞬も隙を見せず姿勢を正すこと。笑顔でいること。観

客に視線を向ける事トークもただ適当に答えるのではなく、見ている人が楽し

いと思えるように工夫している事


「疲れが顔に出てるわよ。常に表情には気を使いなさい」

「・・・はい」



完璧に見えていた紫音でさえプロの先生の前では注意点だらけな事に

気づく。狭き門、と言われていたけれどそれは想像を遥かに超えていた




「これが・・・芸能人・・・」



心をひっくり返されたような、撃ち抜かれたような感覚が襲った





「ここ最近地下室に籠っているようですが一体何を・・・?」

「別になんだっていいでしょ。いい?絶対入ってくるなよ?入ったら蹴り飛ばす」

「それになんだか疲れているようですが・・・」

「別に」


話を遮るように席を立つと部屋ではなく地下室に入る。紙に向かってペンを向

けるが数秒のうちにペンは離れまっさらな紙を見ては大きなため息をついた



「いつもどうやって歌を作ってたっけ・・・」



今までそんな事を考えたことはなく、当然である。思うがまま思い浮かんだもの

を歌っていただけなのだから。幼いころは一度きり、歌ったフレーズなど覚えて

いる訳もなく形として残っている曲なんてほんの数曲だ。作曲科がどうやって曲

を作っているのかは分からないが、一筋縄では行かないことは明白だった




「・・・・・・うー・・・」




文字が書かれているものの斜線の引かれた紙に突っ伏すと唸り声を上げた

頼まれてからとりあえず作ってみようと机に向かう物の一向に何も浮かばない



「はぁ・・・」


そんな時、扉が開く音がした





「父さんも出演者だから彩花にポケモンの面倒見を頼みたいんだ」





テーブルに出された紙の表紙には本の表紙のような題名が書かれており開かれる

と番組の段取りが書かれた台本だと言う事が分かる。その中でポケモンを使った

企画があるらしく安全面を考え父が自分のポケモンを使うのを提案したらしい


「安全を考え絶対に大丈夫なポケモン達を連れていくつもりだが出番がない時皆
 も慣れない環境に不安がるだろうしトレーナーがいた方が落ちつけるだろう」

「だけど・・・」


そんな事をしている時間はない。そう言おうとしたものの言葉が止まる。異変

に気付いた父の質問に今起きている状況を説明すると父は驚いた。こうして父

と共にテレビ局にやってくると沢山の人が空間をせわしなく行き来している



『なら実際に雰囲気を体験した方が色々わかるんじゃないか?』



目指すものを少しでも知れると勧められるまま引き受け撮影スタジオに挨拶

を済ませると控室にて辺りを見渡すポケモンたち。そして本番中彼女らが苦労

して会得しようとしていた技術をいとも簡単にこなす出演者を呆然と見ていた

他にも、自分が気づかないだけで気を使っている部分が沢山あるのだろう




『おつかれさまでしたー』





撮影を終えポケモンを撫でていると父と共に中年くらいの男性がやってきた


「いやーよくなついてるねえ。流石はカミヅキ博士だ!」

「ははは、実はこのポケモン達全員娘のなんだよ」

「ほう?・・・身近で見るのは初めてだったけどおかげで安心して撮影できたよ」



お礼を言われ慌てたように頭を下げると仲良よさげに話す父の姿に視線を上に向ける


「スタッフも安心して撮影に臨めたって言うし、次も考えているそうだよ。
 ・・・あ、そうだ。実は娘が芸能学校に通う友人の頼みで曲を作ってい
 るそうなんだけど・・・何かアドバイスとかあればして貰えないか?」

「え?」

「あぁ、彼は作曲家でね、結構聞いたことがあるものが多いと思うよ。主に
 番組などのBGMを手掛けることが多いが・・・基本は大体同じだろう?」



顎に手をかけ考える素振りを見せると


「・・・どんな曲を作ろうとしているんだい?」

「え?えーと・・・それは・・・そもそも他人の歌なんて作ったことなくて・・・」

「じゃあ、君は普段どんな風に曲を作るんだい?」




スタッフに呼ばれ父が去っていくと向き直り彩花は答える




「ただ、思いついたものを歌詞にして、頭に浮かんだフレーズを音にして・・・」

「いつも?」

「はい。いつも自分が歌うのはいつの間にか出来てるから・・・とはいえここ
 数年は形に残す形の歌は作っていなくて・・・いわゆる即興ってやつですね」

「驚いた。それで作れるならまるで天才じゃないか」

「子供がやる砂遊びみたいなものですよ。適当に思い浮かんだものを歌って
 。クオリティとか評価とか気にせずに、歌ったらすぐ忘れますし。だから
 天才とは違う気がします。それが世間で通用するかどうかはまた別ですし」

「ふむ・・・」

「だからいざ他の人の曲を作ろうとするとこれといったものが浮かばなくてどう
 やって作ったらいいのかわからないんです。自分だけのものじゃないから・・・」






「曲って言うのは、その場に応じて変えるものなんだ」

「え?」

「例えばドラマの主題歌としての曲なら内容に沿うように作る。暗い話なのに
 ポップな曲は似合わないだろう?また歌うアーティストにも得意不得意があ
 るからね。誰もが多少はアーティストとの相性も考慮してるんじゃないかな」

「相性?」

「歌手が『歌いたい』と思う曲が一番だと思う。共感できたり好みだった
 り、作曲家と歌手の意気が統合してこそ傑作の曲が出来あがると僕は思う」

「・・・・・・」

「音階とかその人ができる範囲を考慮する必要もあるけど・・・プロデュース
 曲なら、もちろんその人に合った曲がいいし。相手を知る事も重要だと思う」




その後、会釈しお礼を告げると父の方へと駆け寄っていく




「関係者に他の局内の見学ができないものかと頼んでたんだ。そしたらちょう
 ど今雑誌の撮影してるみたいでよければどうぞだってさ。アイドルを目指す
 子の事なら参考になるんじゃないか?その子と話もできるかもしれないし」

「え?それ私がしても意味ないんじゃ・・・」

「曲作りの参考になるかもしれないだろ?」

「・・・どうしてそこまで?そこまでする必要は・・・」



思ったままの疑問を投げかけると迷うことなく答える言葉に何かが揺れ動いた



「何を言う。真剣に取り組もうとしている事に協力しないわけにはいか
 ないだろう?自分ではない、誰かの為にやろうとしているんだから」

「!」

「だから、したこともない頼みを引き受けたんじゃないか?」




言われて気づく。いつもアイドルになるために真剣に取り組んでいる紫音の姿

があった。一般人にはわからない技術のあれこれを身につけようとしている姿が


「で、何かヒントは掴めたかい?」

「・・・その人に合った曲とか・・・その人が歌いたいと思う曲が一番だって」




彼女がどんな人かまったくわからない。穏やかでお嬢様で、音楽の名家で

表面的な事はわかっても彼女がどんなものが好きなのか全然わからない




「紫音、昨日は練習ありがとう。おかげで重点を置くべき場所が掴めたよ」

「それはよかった。また何かあれば相談してくださいな」

「紫音は歌も上手ですごいなあ。言葉遣いも元から丁寧だし」

「いえいえ、貴方は私にはない力強さと柔軟さを持ち合わせていま
 す。貴方の生き生きとした歌声は私も羨ましいと思っていますの」

「・・・・・・」




決して孤立している訳ではない。彼女の実力を周りも認めているのか相談した

り助言を受ける姿が見られる。そんな様子を見ていた彩花は意を決したように

紫音へと向かった。少しでも彼女に見合うイメージに近づけるために




「どんな歌が好きか・・・ですか?」

「あー・・・少しでも参考にならないかなーと」

「小さい頃からずっとクラシックばかり聞かされていましたから・・・その影響
 か歌もそういった感じのを聞く事が多いかしら。けど・・・違うのにもチャレ
 ンジしてみたいとも思いますわ。やろうと思えどなかなか難しいですが・・・」

「・・・そうなの?じゃあどうしてアイドルになろうと思ったの?」


家系は音楽ではあるもののアイドルとは遠い演奏家だったり普通に考え

ると同じ道を目指すはず。なぜ今まで前例のないアイドルなんだろうか


「なんというか・・・普通はそう思わないんじゃ?」

「えぇ、そうですわね。普通ならアイドルになろうなんて思わなかった」



「中学生の頃、私は母と同じくヴァイオリニストになろうとしていました。あ
 る日の帰り道、車の中から街頭スクリーンにあるアイドルグループの映像
 が映っていたのが見えたんです。それは先日行われたライブの中継でした」

「へぇ」

「アイドル自体知らなかった私にとって、彼女らは「異様な人達」という
 印象でした。私にとってひらひらとした衣装はあまりにも衝撃的で」

「確かに・・・演奏家の人はドレスっていうか・・・シンプルな衣装だよね」

「しかし、あんなに奇抜で上品とは言えない衣装を纏っているのに彼女達の歌は熱
 意そのもの。ダンスと共に魅せられ思わず衝撃を受けました。クラシックにはな
 い掛け合いによる会場との一体感・・・キラキラとした輝きは今も覚えています」

「それでアイドルになろうと・・・」

「あんな衝撃は今まで受けたことがなく、私も同じように輝きを感じたい・・・」




その時、頭の中に何かが浮かぶと紫音の横で彩花はノートに何かを書き始めた




「これだ・・・これだよ!」

「ど、どうかされましたか?」

「紫音、先に帰る。じゃあ!」

「えっ・・・」


言葉を返すより前に彩花の姿は消えていた。道路を小走りで進み地下室にやって

くるとおもむろにノートとペン、そして隣にあった機械の電源を入れると彩花の口

から発された言葉は何かしらの音階を奏でていた。少し口ずさむと画面に音階が

表示され、それを繰り返し調整しながら表示されるメロディーは長くなっていく



「紫音!」


次の日、教室に駆け込むと紫音は驚いたように彩花を見ていた


「一応・・・出来たんだ」

「え?」

「曲が・・・出来たんだ」




休み時間、移動すると渡された歌詞カードを持ちながら紫音はヘッドフォン

をつけボタンを押すとメモリーカードに入った音楽が流れ出し、音を聞きな

がら僅かにリズムを刻んでいる様子を汗が流れる感覚の中見ていた


「・・・・・・」

「どう?勢いで作っただけだからこれで完成っていうわけじゃないけど・・・」



反応が返ってこなくてやっぱり駄目だったかと焦りを感じる


「ご、ごめん。どうしても自分が歌って楽しい歌になっちゃって・・・変だよね」

「いえ・・・。想像していたのと違ったから驚いただけですわ」


ヘッドフォンを外すとスピーカーから隣の部屋にいる紫音の声が聞こえる


「とても明るくて・・・聞いていて心地いい・・・曲ですわ」



それから数時間、防音室に籠って紫音は曲に合わせ歌を歌っていく


「たった一日で作るなんて・・・」

「ええと・・・本当にぱっと思い浮かんだ、自分が作りたいのを作っただけだ
 から・・・プロの間じゃ通用しないんじゃないかな。・・・ねえ、実は、これ
 ・・・紫音を曲にしたらどうなるんだろうってイメージしながら作ったんだ」

「え?・・・私を?」


驚いたような声を上げると歌詞カードに視線を落とす


「し・・・紫音って見た目とか口調とかいかにもお嬢様って感じだけど・・・
 そこには確かに夢に向かう情熱があるんだ。だから綺麗をイメージしなが
 らも力強さを感じられるように他に比べてサビは早めに作ってあるんだ」

「・・・・・・」

「サビの部分、紫音が小さい頃からやってたっていうヴァイオリンを主旋
 律とバックに効かせて、ドラムの音はいつもより小さめにしてあるんだ」


静かに、歌詞カードを胸の前に抱え込むと紫音は口を開いた



「・・・ここからは私次第・・・貴方の歌、絶対完璧に歌ってみせますわ・・・!」



それから紫音は練習室に籠るようになりこれ以上の手助けは必要ないという。本

来作曲とは何度も編曲をしていくものだが素人同然の彩花にそんな技術はない



(たまにここが静かだなーって音を入れる事はあるけど・・・うーん・・・)



そんな様子を廊下を歩いていた藤咲鳴海が気づき話しかけようとした時、窓

の外が騒がしい事に気づき足が止まって横を見る。生徒達が門を囲んでいた



「あれは・・・?」



ざわざわと声と共に間を通って行くのは3人の女性達だった。同じく彩花も外の声

に気づき窓の外を見ると周りの生徒たちの中からは歓声のようなものが飛んでいる



「彩花、そんなところで何を・・・」

「紫音。外が何か・・・」

「あれは・・・Drops?」


やってきた紫音が外を見ると彼女達の姿を見て呟いた


「確か・・・うちの学校の卒業生だっけ?」

「藤咲さん。確か・・・全国ツアーも行った人気アイドルグループ・・・」

「テレビでもよく見るよ。この間も音楽番組に出ていたし・・・」



何故そんな人達がここに来たのか。藤咲鳴海が呟いた言葉の意味は後日知る事

になる。それは私と霧島亜理沙の滞在が残すところあと1日となった所だった



「合格者から選ばれた5組は1カ月後近くのホールでライブに出演できる。そこ
 でここの卒業生Dropの3人がゲスト出演してくれることになった。人気グルー
 プと共演できる機会はそうない。この貴重な機会に参加できるように励む事!」

「はい」



人気グループと同じステージに立てるという事を聞いた生徒たちは更に練習に励

む。誰ひとり手を抜いているつもりはないという事がピリピリとした空気から感

じ取れる。それだけ今回の試験とあのライブが重要なものだということだろう





「なんというか・・・やめようって思った事ってないの?」

「・・・まだ入り口にも立ってない。ここで折れるならアイドルにはなれないわ」



メガネをくいと上げると霧島さんが告げる。続いて紫音が


「確かに・・・いつもダメだしばかりで落ち込む事もあります。ですがキラ
 キラした彼女たちの姿を思い浮かべると・・・負けられないと思うのです」

「だってアイドルって色んな事出来なきゃいけないでしょ?自分のキャラに合
 わなかったり苦手な事って中々出来ないと思うの。私は歌は好きだけど芝
 居とか無理だし。途中にある話の場面とか何話せばいいかわかんないし」

「・・・アイドル自体私は知らなかった世界。私が受けた衝撃を私自身が与えて
 みたい。自分を恐れてはあるかもしれない道も見つからないのです。苦手な
 事は確かにあるけれど・・・避けていては認められるはずもないと思うのです」

「え?」

「自分のありのままを曝け出すのはとても勇気のいる事。けどそれをして認め
 られた時、すっと気分が楽になって今まで出来なかった事が出来るようにな
 る気がするのです。現にここに来て、皆と打ち解けた時はそう思いました」



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次回

父にあるものを届けにテレビ局にやってきた彩花だったが突如魔物がテ

レビ局を襲撃する。そして迫りくるのは紫音にとって重要なあの試験。全力

を出し切った紫音だったが卒業生である彼女達から厳しい評価を受け・・・


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