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INFINITE

一人の神は空間を作り、世界を脅威から守るために組織を作った。そんな組織の一員として招待されたファイター 達の日常、時にシリアスな物語。そんな彼らと出会った少女達の歴史物語。スマブラ主の二次小説ブログ

第27章、禁断の果実

カトレアは彩花達にせめてもの願いを託す。逆転する方法も見つから

ぬまま、その時は刻一刻と迫る。決行前日、リレミア城にセルリアが駆け

込み、カトレアの前に現れたのは倒れたシズクだった。ベス兵の罠にか

かった彩花達を助ける為、カトレアは助けに向かおうとするが……
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峠の麓、歩き続けたミズキたちは唯一『天使の果実』が栽培されている場

を目指していた。見渡す限りでは二人の姿は見当たらず、シズクの話では

頂上付近でシズクは偵察の為二人から離れ、あの事態になったという


「不覚でした。考えてみれば、おかしかったのです」

「……」

「わざわざあの場でベスの名を出した。あれも全てベスの罠だったのでし
 ょう。街にいた占い師から全て、手のひらの上で踊らされたという事」

「シズク、今更そんな事言っても仕方ないわよ」


シズクに対しカトレアは告げる


「今は、起きてしまったことじゃなくて、これからどうするべきかを考えるべきよ」

「カトレアさん……」

「急げば、まだ間に合うかもしれないのだから」

「……はい」







「シズク、遅いねえ」

「やはり、霧にでも遭遇してしまいましたかな」


その頃、頂上付近を歩いていた彩花達はシズクが戻ってこないことに

心配の声を上げると、男性は困ったようにキリが勝った麓を見て告げた


「この辺りは霧が時折発生し、地形を把握していない者が迂闊に出ると迷
 ってしまいます。いやはや、この時期はあまりないのですが運が悪い……」

「どこかで霧が晴れるのを待っているか、探しているか……」

「すぐ戻ってくると聞いたので、心配はないと思ったのですが……。それと
 もそこまで遠くまで偵察に行かれたのかな?何にしても、遅いですなあ」


だが、男性はシズクの姿を探す二人に対して告げる


「ですが、彼女は空が飛べるのでしょう?頂上できっと合流できますよ」

「そうですかね……」



やがて、頂上へ上り詰めると巨大な木が一本そびえ立っていた。木自体は

どこにでもある姿をしているが、そこになっている紫色の実はどこか不気味

に見えた。やがて男性は慣れた手つきで木の枝になっていた実を取る



「さあ、これです」

「……」


差し出した実を見て、ギンは息を呑み彩花に問いかける


「彩花さん、本当に……あの実を?」

「……」

「……」

「……あの国を、ミズキを助けられるのなら……」


そう呟く彩花の目は実を見つめていた。あれさえあれば、本当に何倍も

の力を手にすることが出来るのか。リレミアやアルデバランを救う事が

出来るのか。言葉には出せずともギンの中でそんな思いが蠢いていた


「さあ」


再度促す男性の声が聞こえると、彩花は無言で前へ歩み出た



「……」



差し出された実へその手は伸び、彩花の手のひらへ実は乗った


「……」


ギンが何も言わず、その様子を眺めている間、彩花は手に持った実を眺

めているとやがてその手は胸元に、のど元に、そして……口へ近づいて

いく。やがて口を開け、その実をかじろうと近づけていくと……



「彩花様!!」



遠くから声が聞こえ、彩花は振り返った。それに続きギンも振り返ると

そこにはリレミア、アルデバランの兵達に交じってミズキの姿が見えた


「ミズキさん……?」

「……!」


彩花の手に持たれた実に気づいたミズキは駆け出してギンの横をすり抜

け彼女の元へ駆け寄った。そして有無を言わさず腕を掴むと、彼は叫んだ


「その実を口にしてはいけません……っ!!」



彩花の手にあった実を叩き落とすと、それは地面を転がっていく


「な、ミズキ……?」


突然の事に戸惑っていると、ギンの元へ駆け寄ったシズクが叫ぶ


「彩花さん!これはベス兵の罠です!」

「な、罠……!?」

「チィッ、後少しだったのに……!」


二人が驚いた直後、男の悔しさを含んだ声が聞こえた



「どういうことだ!ここまでには傭兵がいたはずだ……!」

「全員お帰り願いましたよ」

「彩花様!実を、口にしていませんよね!?」


切羽詰まった表情で問い詰めると彩花はギョッとしながら


「え、あ、うん……まだ……」

「よかった……っ!」

「え?……え?」


すがるように言葉を繰り返すミズキをよそに、カトレアは男性に槍を突きつけた


「どこまで汚い手を使えば気が済むのかしら」

「策略的と言って欲しいですね。後少しで絶望に狂う貴方達が見られたという
 のに。大切な仲間が悪魔に魂を奪われ、壊れるまで人々を殺める姿をね」

「なっ……!?」

「ギン、全てベスの罠だったのです。あの実は人を狂わせてしまう」

「人を……狂わす……?」

「えぇ。…………無事でよかった」


やがて、カトレアの元にミズキと彩花もやってくるとミズキは剣を引き抜い

た。それに対し男もだまし討ちを諦めたように何かの合図を送り、至る所か

らベス兵の姿が現れた。それも武装を施した万全の状態の姿で


「え……ベス兵……?」

「私達はベス兵に騙されていたのです」

「ベス兵に?」

「えぇ。あの話を占い師から聞いたときから、全て……」

「嘘……」


その結果、今のような状況が起きている


「私はあの後、ベス兵に襲撃され、このことを伝えようとリレミア城に
 向かおうとしました。途中で力尽き、教会の方に助けられたそうです」

「ちょっと待って、今ってもうすぐベス兵が攻めてくるんじゃ……」

「……」

「ミズキ達がここにいるって事は……。……」

「彩花様は、何も悪くありません」


目を伏せる彩花に対し、ミズキの声が全てを遮った


「むしろ、そこまで私達を想って下さったこと、言葉では言い表せない程
 感激しました。いかに、私が王の器に相応しくない人間であるかと共に」

「っ違う!自分はそんな事が言いたかったんじゃなくて、ただ、ただ……っ!」

「……」

「ただ、力になりたかっただけなのに……っ!!」



やがて、じりじりと囲んでいく兵の中この隊の将らしき男の声が聞こえた



「美しい。とても素晴らしい絆だ」

「……」

「だが、そんなごっこ遊びもここまでだ。君たちの勇気は称賛に値するよ」



あざ笑うかのように男は笑みを浮かべ


「ここで安らかに死ぬといい。どうせ、君たちに未来などないのだから」

「……いいえ」



その時、ミズキの発した声に男の表情は僅かに変わった


「私達は、まだ諦めていない……っ!」

「ほう、この圧倒的状況を見てもそんな事が言えるか」

「私は甘かった。武人としても、王子としても……。だが、民を想う気持ちだ
 けは誰にも負けないつもりだ。いや、負けない。……煌剣シュベリオンよ」



やがて、引き抜かれていた剣を突き出すとそれは今まで身に着けていた

ものとは違っていた。赤い宝石が埋め込まれ、高価な宝飾が施されたもの


「この剣を持って、この戦いを生き抜いてみせよう!」

「ミズキ……」


やがて、兵士たちがぶつかり合うと次々とベス兵は倒れていく。そして

数の差があれどリレミア軍は勝利し、一同は城まで戻ってくるのだった



「……」

「……」


カトレアやカンパネラを始め、多くの人が部屋に集う中やがて話は切り出された


「ひとまずは、一件落着ってところかしら」

「そのようですね」

「とはいえ、まだ根本的な解決にはなっていないけれど」



カトレアの言葉に、ミズキは意を決したように顔を上げた


「……少しは目が覚めたようね?」

「……えぇ。やはり貴方は王女に相応しい」

「……」

「自分の事ばかりで、忘れていたよ。幼い日、民の前に出て祝福されたあ
 の時の光景を。民と笑って言葉を交わす父の姿を見ていた時のことを」


やっと、今僕がここに立つ意味を知った、と彼は告げた


「抗うのは、僕が王族として生まれたからじゃない。笑って生きる民を、活気
 に溢れるこの国を誇りに思うからだ。……ずっと忘れていた。大切なことを」

「……」



そんな会話を聞いていたギンとシズクは、彩花がそわそわしている事に気づく


「……?彩花さん?どうしました?」

「え?あ、いや……」


質問に対し、彼女はどこか戸惑ったように次の言葉を発さない


「……」



自由でいたかった。王子などなりたくなかった。その言葉を聞いた時

ある人が浮かんだ。それは目の前で現実として起きた、記憶の一部

きっと、今まで生きてきた中で片手に数えられるほどの衝撃だった



「……今でも分かりません。俺達は、王子であることを苦痛に感
 じていたあの人にどう声を掛けたら正解だったのんでしょうか」

「え?」


すると口を開いたのはギンだった。彼の言葉に彩花は聞き返し


「……色々、分からなくなりました。今までこうだと思っていたものと現実は
 違っていて……。正義などないと思っていたこの世界に、何が本当なのか」

「……」

「あの時、彩花さんが言いたかった事って、こういう事だったんですね」



その後、彩花達はレプシス達からあの実の正体を聞くのだった


「そんなものが……」

「確かにあれは一歩間違えれば全てを狂わす毒。ですが、然るべき方法で扱
 えば薬として優秀な実なのです。その為、国内でも知る者はほぼ一部……」

「俺達は、間一髪ミズキさんに助けられた、ということですね」

「……ミズキ!」


彩花は少し離れた場にいたミズキに投げかけた


「彩花様?」

「一般人である私達にはきっとミズキの気持ちは分かってあげられない」

「……」


だけど伝えないと。何故かそう思った


「……国を守ったり、戦う事は私達でも出来るよ。だけど、この国を……本当
 の意味で守って上げられるのはきっと王子であるミズキにしかできないんだ。
 きっと、国の人や兵の人に心が通じるのは、ミズキの言葉だけなんだ……!」

「……!」

「……私の知り合いにね、ミズキと似た思いをした人を知ってるんだ。国を
 追われて、家族とも離れ離れになって……。その場に私はいた訳じゃな
 いけど、ある場所でそれを知って、王子になりたくなかったって言ってた」

「……」

「だけど、仲間がいたから乗り越えられた……って言ってたんだ」


それを聞いた自分には理解できなかった。だけど……


「……ミズキにもいるじゃん!レプシスさんやレイムさん、忠誠を誓った人たちが!」

「あ……」

「兵士の人だって、王宮騎士団の人だって。カトレアさんや、スノーさんやド
 ット達だってミズキの事を信じているからここまで一緒に戦ってくれたんだ!
 優しさじゃ人は助けられないけど、優しさのない人にこうはならないよ!」




「……私もそう。だから……」

「……僕は、定められた運命が憎かった。変えられない運命だと分かっていて
 も、心のどこかで自由になりたかった。見たこともない世界を旅してみたかった」



だけど、僕がそれが許されないように彼女たちにもまたできない事がある


「この国を動かすのは王子である僕にしかできなくて。全員に意思を伝
 える事ができるのも僕だけだ。僕には武術も才能もないけれど……」



それは誰に向かって告げた言葉だろうか。命の恩人である彩花達か、それとも

ずっと共にいてくれたレプシス達か。他国であるにも関わらず協力してくれてい

るカトレア達か。それとも……今この場にはいない、遥か天の存在へか


「僕は父上が守ったこの国が大好きだ。今は上手くいかなくても、
 僕は1人じゃない。レイムやレプシス。支えてくれる城の皆がいる」

「!」

「カトレア王女やスノー達……言葉があれば人は繋がれるとも知った」

「……」


やがて、ミズキはあの時見た宝石のはめ込まれた剣を取り出した。今は鞘

に収まっていながら市場に出回っているようなものではないと一目でわかる


「これは、煌剣(こうけん)シュベリオンと言って、リレミア独立戦争
 が終結した後に、国と民の幸福を願って作られた宝剣なんだ」


これは人々の願いを込めて作られたもの。だから血塗られた剣にしたくなか

った。だけど人々に願いを伝えるのも、この剣でなければいけないのだろう。

鞘に収まった剣を掲げると、ミズキは真の通った言葉で告げた



「もう、運命から逃げたりしません。僕は僕のするべきことをする」

「ミズキ様……」

「だから、彩花様、カトレア王女、皆……もう一度、僕に力を貸して欲しい」



しばらくの空白の後、カトレアとスノーの声が聞こえた



「……愚問ね」

「ふふ、そうだね。初めからそのつもりだったよ」

「此処にいる人は皆貴方の器を認めてここにいる。もはやこれは自分の国
 の為でも、自分の為の戦いでもない。これは、ランドールの為の闘いよ」

「……」




後日、不幸中の幸いか、理由も分からず進軍していたはずのベス兵が

撤退していった報告を受けた。ひとまず安堵の息を吐く中、ある部屋で

商売道具を見ていたルイスだが、突如ノックと同時に扉が開いた



「あらー、カトレア王女じゃないですかー」


クロスを畳むとルイスはにこやかに問う


「何か御用ですかー?あ、カトレア王女も私の商売道具が気になって……」

「貴方も、ランドール大陸の者ではないそうね?」

「?はい、そうですよ~」


城内やミズキの話はあの三人ばかり、だが彼女もまた大陸外の者である


「まあ、商人ですから、裏でお支えするのが主な役目ですし~?」

「貴方も随分とお人よしというか……」

「あぁ、ここにいる事ですか?んふふー」



直後、奇妙な笑い後を上げた彼女を見ると


「な、なによ」

「いえいえ、商人を舐めて貰っちゃ困りますよー?と思いまして」


やがて商売道具と思わしきものを置くと


「商売人も信用第一ですからね~。それに商売は積み重ねが大事なので
 すよ~?ここで得たものが、数年後、新たな実を結ぶかもしれませんし?」

「……?」

「私の家系は代々行商人をしてきたのですが、過去に祖先が回った
 土地も含めて回ることが多いのですよ~。信頼を得る為なら、ちょっと
 やそっとの危険は当然です。なんたって武器をも扱う商人ですしー?」

「つまり、貴方は情で私達に協力している訳ではないと?」

「いえいえ、そんな事はありませんよ。ですが、元を正せばそうなのかもし
 れませんね。ですが、私が皆さんに過去に回った場の話をしたように、
 ここでの経験もまた、数年後訪れる場所で役に立つ可能性もあります」

「未来の為に積み重ねてるってことね?」

「そうですね~。偶然とはいえ、私も貴方達のような統治者は好意的ですし、私
 個人でも協力したい、と思っているのですよ。まあ、命あってのものですけど」




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次回

ミズキが戦線に戻り、士気を取り戻すリレミア軍。そんな中彼らの元に

ある文が届くのだった。それはアルデバラン王からのもので、近いうち

にベス連合軍との戦いがあることを知らせるものだった……


次回 第28章、「選ぶ道」


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